技術情報を無償公開したMSの深謀遠慮:トレンドフォーカス(2/2 ページ)
MicrosoftがOSなどの技術情報を無償で公開する方針を発表した。背景には、独禁法問題への対処やオープンソースの台頭などが影響しているとみられるが、最大の眼目は、より多くの優秀なITエンジニアを“味方”につけたいということだろう。逆に言えば、今回の動きはそこにおける同社の強い危機感の表れとも見て取れる。
ITエンジニア支援策を強化した日本法人
その最大の眼目はどこにあるのか。それはひとえに、より多くの優秀なITエンジニアを“味方”につけたいということではなかろうか。無論、オープンソースのソフト開発者も含めてだ。
こうした戦略転換の流れの中で、マイクロソフト日本法人が3月5日、ITエンジニア向けの支援策を強化すると発表した。日本のエンジニアから要望の多い技術資料を優先的に翻訳するほか、エンジニア同士が情報交換を行う場も提供する。従来、ネットなどで公開している技術資料は製品概要などが中心だったが、今後は、より実用的な資料も日本語化していくという。まず今後6カ月で1万ページの資料を翻訳し、随時追加していく計画だ。
同日行われた記者会見では、樋口泰行代表執行役兼COO(当時)が、「ITエンジニアの育成支援は、将来の我々の会社(の運命)が懸かっている大事な取り組みである」と強調した。また、ダレン・ヒューストン社長(当時)も、「マイクロソフトにとって改善が必要なところは何かとよく聞かれる。その答えとして、わたしが最後に日本で発表するものに選んだのが、ITエンジニア向けの支援策だ」と、この施策の重要性を説いた。
米国本社が行った技術情報の公開も、日本法人が発表した支援策も、共通する狙いはMS製品に関わるITエンジニアの層をさらに厚くすることだ。そのためには、オープンで柔軟な技術基盤を提供する必要がある。それが、MSが今後も長期にわたって成功することにつながる――冒頭で紹介したバルマーCEOの発言の真意はこう説明することができるだろう。それは取りも直さず、より多くの優秀なITエンジニアを味方にしないと、大きく変化する市場環境の中でMSといえども立ち行かなくなるとの強い危機感の表れともいえよう。
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