足かせではなく好機、J-SOX法で経営全体の見直しを
いよいよ適用が始まったJ-SOX法に向けて、各企業とも業務フローや組織の「見える化」に取り組んでいる。これを契機に経営全体の見直しを図ることが必要だ。
2008年4月から本番年度を開始している日本版SOX(J-SOX)法。既に数年前から内部統制を強化し、業務フローの文書化や評価方針の策定など新法への対応に向けて着実に準備を進めている企業もあれば、いまだ何をすべきか分からないという企業も少なくない。
また、IT部門やコンプライアンス室といった担当部署では、いや応なしにやらされているという意識が強く、対応がスムーズに進まない問題もある。
J-SOX法は企業にとってビジネスの足かせでしかないのだろうか。
「経営者はJ-SOX法をきっかけに業務や組織の問題点を洗い出し、経営全体を見直すことができる」――こう語るのは、After J-SOX研究会で座長を務める立命館大学大学院の田尾啓一氏だ。
After J-SOX研究会とは、J-SOX対応以降の企業の課題や取り組みを議論し、連結経営やERM(エンタープライズ・リスク・マネジメント)の重要性を推進する非営利組織である。2007年11月に発足し、現在は36社106名が参加する(2008年5月時点)。田尾氏は続ける。「日本企業が国際競争で勝ち残るためには、グローバルの視点で経営の見える化、ガバナンスの向上に取り組む必要がある。J-SOX法や(今後日本でも導入が始まる)国際会計標準はそのチャンス」
米国での適用を先行事例に
2004年から既に適用が始まっている米国SOX法は、日本企業にとって貴重な先行事例となる。同研究会で運営委員の永井孝一郎氏(アビーム コンサルティング プロセス&テクノロジー事業部 プリンシパル)は、米国SOX法への対応で培った経験に基づき、「米国は内部統制の担当者が頻繁に変更するため、ノウハウやスキルが蓄積されない。日本は長期的な視点を持ってしっかり土台をつくっていくべき」と強調した。
一言でJ-SOX法対応、内部統制強化といっても、するべきことは多岐に渡る。一度にすべてを片付けようとせず、段階的な取り組みが重要だといえる。
第5回 ITmedia エグゼクティブ セミナー 『間違いだらけのJ-SOX 取り組むべきは経営改革』
いよいよ、この4月の新年度から上場企業には、財務諸表の信頼性をより高めるため、内部統制報告書の提出が義務付けられました。しかし、そのお手本である米国のサーベンス・オクスリー法(SOX法)を見ても分かるとおり、それは突然降ってわいたものではありません。
米国における内部統制は、1970年代から1980年代にかけて企業の粉飾決算や経営破綻が相次いだことを受け、当初は財務報告の適正化を目的としていましたが、1992年にトレッドウェイ委員会組織委員会(COSO:the Committee of Sponsoring Organization of the Treadway Commission)が公表した内部統制のフレームワークでは、「財務報告の信頼性」だけでなく、「業務の有効性および効率性」や「関連法規の順守」がその目的として追加され、企業が事業を遂行する上でより広い範囲のプロセスを対象とするに至っています。つまり、健全な企業経営に向けた自浄活動の積み重ねといってもいいでしょう。
第5回 ITmedia エグゼクティブ セミナーでは、内部統制の本質は経営改革や改善活動の推進にあるとし、リスクに強く、スピード経営が可能な組織づくりを議論していきます。
またパネルディスカッションでは、株式会社アイ・ティー・アール(ITR)の内山悟志代表取締役をモデレータに、After J-SOX研究会の中心メンバーが徹底議論していきます。
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