顧客の経験価値とはいったい何?:トレンドフォーカス(2/2 ページ)
Web2.0の浸透は、企業中心から消費者中心へと市場を大きくシフトさせた。企業主導の広告や販売戦略は影響力を弱め、顧客の発言が大きな力を持ち始める中、顧客側が望む企業との接点を「経験価値」の観点から管理するCEM(Customer Experience Management:顧客経験管理)が、今後のビジネスにおける成功のカギを握るとみられている。
経験価値の成功例と失敗例
これまでも、顧客の経験価値における成功例・失敗例は多い。ブロック玩具メーカーのレゴが発売した「マインドストーム」(デンマークのレゴと米マサチューセッツ工科大学教授のシーモア・パパート氏が共同開発した教育用「レゴ」のロボティクス開発ソフトウェア)は良質な知育モデルとして注目されたが、ハッカーにハッキングされソースがネットに流出。そのため、レゴはマインドストームをオープンソース化し、だれでも改良できる環境に置いた。その結果、オプションなどの関連事業で大きな収益を得た。
一方、業績低迷で「ペプシに勝てる味」を模索していたコカ・コーラは、市場テストを繰り返し、1985年に『ニューコーク』を大々的に発表した。しかし、理由もなく飲み慣れた味を突然奪い去られたファンは激怒。全国から1日8000件もの抗議が殺到し、不買運動まで起きたため、やむなく同社は以前のコークを復活させた。商品やブランドを隠し、味だけを比較した製品づくりの失敗は、コカ・コーラにとって経験価値を知る上で貴重なケーススタディとなった。
今後、CEMを定着させるためには社内の営業とマーケティングをどのように最適するかが課題という匠氏は、その対策として「自社にとっての成功要因となる新たな指標(スコア)を持つことが必要」と指摘する。顧客の満足度をどのように正しくチェックするのか。返品率で計る場合もあれば、顧客が主人公になる顧客参画率を指標にするケースもあるだろう。
しかし、最適な指標はそう簡単に見えるものではない。顧客の経験価値を高めるためには、既存の指標を当てはめるつじつま合わせではなく、満足度やロイヤリティーとどのように関連しているのかをつかむ努力を積み重ねていくことが重要かもしれない。
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