中堅・中小企業こそ内部統制の整備に取り組むべし――牧野弁護士:ITmedia エグゼクティブセミナーリポート(2/2 ページ)
金融庁が3月に発表した文書「内部統制報告制度に関する11の誤解」を基に、弁護士の牧野二郎氏が内部統制の整備に取り組む上での企業の心構えを説いた。
中小企業こそ求められる内部統制の整備
内部統制を確立する上で、これまでフローチャートなどによる業務の文書化が不可欠とみられてきた。だが、実のところ内部統制の記録として新たな業務記述書の作成などは必ずしも求められておらず、必要に応じて補足を行うことで企業は対応を図れるというのが金融庁の見解だ。
この点に関して、牧野氏は文書化の本来の目的を業務の可視化と説明。業務フローを正しく認識し、業務を合理化する活動を継続的に行うために文書が必要とされているのだという。
「文書として記録することは、これまでの活動を確認し、反省するためにある。継続して発展を続けるためにはより多くの情報を記録しておく必要がある。そのために、ITは大いに活用できる。もちろん、業務が改善できた暁には文書は破棄してしまっても構わない」
では、中小企業や非上場企業にも内部統制は求められているのか。金融庁によると、内部統制の整備が義務付けられているのは上場企業に限られているとのことだが、牧野氏はこれに異を唱える。確かに中小企業では大企業ほど大掛かりな対応は必要とはしないものの、業務の健全化に向け基本的にすべての企業で内部統制を整備すべきというのが牧野氏の考えである。
その理由は、取引先の監督責任に対応するためだ。例えば、メーカーがある部品を取引先に発注した際には、メーカーには取引先が適切な商品を納品しているかを監督する責任が発生する。万一、取引先が自社の業務プロセスを把握できておらず、適切に納品していることを証明できない場合には、メーカーは監督責任を負えないと判断し取引を打ち切ってしまう可能性が非常に高い。こうした点から、中小企業こそ自社の核となる業務には内部統制を整備すべきと考えられるわけだ。
加えて牧野氏は、内部統制の整備にあたり経営者が主体的に取り組むことの重要性を強調。監査法人など外部の人材は、社内の人材ほど業務に精通しておらず、自社のリスクを適切に判断できないためだ。その上で、牧野氏は監査にあたっての心構えを次のように述べ、公演を締めくくった。
「監査人の指摘には必ずしも従う必要はない。だが、そのためには指摘された点についてリスクがないことを証明できるよう、日頃から監査人とコミュニケーションを取り、自社の業務について説明しておくことが不可欠。日本では監査法人を、いわばだまそうとする風潮が根強くあるが、そうした意識を変革することが経営者に強く求められている」
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