現代社会のあり方を問う――「暴走する資本主義」:経営のヒントになる1冊
70年代を境に世界で資本主義が強大になるにつれ、消費者としてのわれわれの声は大きくなった。一方で民主主義は崩壊しつつあり、もはや政治は民意を反映しなくなったという。
本書は、1970年代以降ますます力を強めている資本主義と、かたやその陰で弱体化していく民主主義について、問題点をクリアにし、解決策を考えていくものだ。
70年代以降、資本主義の暴走、いわゆる「超資本主義」と呼ばれる状況が生まれたが、この変革の過程で消費者および投資家としてのわれわれの力は格段に強くなった。消費者や投資家として、人々はより多くの選択肢を持ち、お買い得な商品や投資対象が得られるようになった。
一方で、公共の利益を追求するという市民としての力は格段に弱くなった。労働組合や監督官庁の力は弱くなり、激化する競争に明け暮れて企業ステーツマンはいなくなった。民主主義の実行に重要な役割を果たすはずの政治の世界にも、資本主義のルールが入り込んでしまい、政治はもはや人々ではなく、献金する企業を向くようになった。
しかしわれわれは消費者や投資家だけでいられるわけではない。日々の生活の糧を得るために汗する労働者でもあり、よりよき社会を作っていく責務を担う市民でもある。現在進行している超資本主義では、市民や労働者がないがしろにされ、民主主義が機能しなくなっていることが問題なのである。
われわれは、この超資本主義がもたらす社会的な負の面を克服し、民主主義をより強いものにしていかなくてはならない。その際に、「ウォルマート・バッシング」など個別の企業をやり玉に上げるような運動で満足するのではなく、現在の資本主義のルールそのものを変えていく必要がある。
元米国労働長官でオバマ陣営の政策アドバイザーでもある著者の力作である本書には、オバマ氏が実践するであろう将来の処方せんが盛り込まれており、今後の米国を占う上で最も重要な書籍の1つになると思われる。その意味で、米国の影響を大きく受ける日本の各界リーダーの方々にとって参考となる1冊になるはずだ。
関連記事
- 【第2回】ロハスはビジネスになり得るか?
社会や環境への貢献を目的とした商品やサービスが相次いで登場している。企業がイメージを向上するための一方的な戦略ではなく、消費者のニーズの高まりが大きく影響しているという。 - エド・はるみが景気回復に貢献? 厳しい環境下明るい材料も
米国の不況や原材料の高騰の煽りを受け、一段と冷え込む日本経済。そうした中、意外な人の頑張りが景気回復に影響を与える可能性もあるという。 - 景気は「局面変化」の判断か。関東甲信の梅雨明けが7月20日前かどうかも注目点
関東甲信地方の梅雨入りは6月2日と平年より6日早かった。過去57年間で関東甲信地方が梅雨の時期に景気が拡張局面にある確率は65%だ。今年は景気面からも梅雨明けがいつになるか要注目だ。 - Wi-Fiウイルスが世界中で猛威を振るう日(前編)
10年後、いまわれわれが知っている情報セキュリティは存在しないかもしれない。おそらく個別の製品としてではなく、あらゆる製品に当たり前のように組み込まれるものになるだろう。あるいはWebサービスが伝統的なエンタープライズ・セキュリティを終焉させるかもしれない。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.