低迷続く日本の景気、過去のマイナス記録を相次ぎ更新:景気探検(2/2 ページ)
世界的な経済危機の中で、日本の景気も多分に漏れず苦しい状況にあり、一般家庭にまでその影響は及んでいる。ヒットする連続ドラマといえば、「強い女性」や「不幸な家庭」をテーマにしたものが多いという。
暗いドラマの人気が世相を反映
身近なデータからも景気の厳しさが読み取れる。NHK大河ドラマ「篤姫」は11月30日放送の第48回「無血開城」で29.2%の最高視聴率を更新した。これまでは10月5日の28.1%が最高だった。最終回直前の第49回までの平均視聴率は24.3%であり、同日の別時間にBSで2回放送していることを考えると、大ヒットと言える。
ヒットした連続ドラマはその時の世相を表している。国民全員が何らかの形で経済にかかわっているので、どのようなドラマが流行しているかをみると景気の局面が読み取れる。例えば、純愛ドラマをのん気に観られる時は景気拡張局面だ。夫の給料が上がらないまたは下がってしまうような景気後退局面では、女性がしっかりしなければならない風潮が強まる。江戸城無血開城に向けて尽力した強い女性のドラマが世の中で評価されていることは景気の厳しさを示唆する現象である。
10月からの連続ドラマでは、TBS「流星の絆」が初回21.2%で、それ以降は15%前後を維持している。12月9日現在ではこのクールの最高視聴率を獲得している。両親を殺された3兄弟が犯人を捜すという暗い話がベースのドラマである。先行きの景気回復を示唆する、あるいは頑張っている人を応援するようなドラマは出てきていない。
最新の犯罪データ(9月分)を見ると、金融機関の店舗強盗件数は5件にとどまった。前年同月が9件で、前年の半分というペースはこのところ続いている。自殺者も2007年10月から直近データの2008年7月まで前年同月比で10カ月連続減少している。一方で気掛かりなデータもある。東京消防庁管内の放火火災件数は2007年9月分以降、4月分の微増を除き2008年8月分まで1年にわたり前年同月比で減少してきた。しかし、2008年9月分では5回以上の連続放火が2件あったこともあり、前年同月比は2割強も増加した。金融危機による心理の変化により犯罪が増える兆しだとすると心配だ。
先の見えない日本の景気回復
各国の機動的な財政出動などにより、世界景気が一気に落ち込むことは何とか回避されるだろう。日本では輸出依存状態が経済のぜい弱さを招いている面があり、内需を喚起するような対策が求められるが、それには時間がある程度かかってしまいそうな状況だ。
10月分の景気動向指数・速報値では、先行指数(CI:コンポジットインデックス)は前月差4.2ポイントの大幅下降、一致CIは前月と比較して2.5ポイントという統計史上2番目の大幅下降となった。参考系列の一致指数(DI:ディフュージョンインデックス)は2カ月連続して、全系列が3カ月前より悪化していることを表わす0.0%で、これは金融機関の大型破たんが生じた1997年11、12月以来のことである。10月分の改定値では、稼働率指数はマイナス符合が見込まれる。
また、11月分の一致DIは製造工業生産予測指数が前月比6.1%減と大幅減少となっていることなどから判断すると、現行統計がある1975年以降では初めて3カ月連続して0.0%の可能性がある。11月分の一致CIは前月差かなりの下降が予測される。足元の景気の厳しさを裏付ける数字だろう。
先行きを示す先行CIも厳しい。10月分先行CIの前月差4.2ポイントの大幅下降は、1997年11月分の3.3ポイント下降を上回る。統計がある1975年2月分以来で最大のものとなった。11月分の先行CIの採用系列では、日経商品指数、東証株価指数、長短金利差、中小企業売上見通しDIの4系列は前月差寄与度が大きくマイナスになることが判明している。先行CIの動向からみると少なくとも今後半年以上は厳しい景気状況が続きそうだ。
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