労働者の権利を問う――「語られなかった敗者の国鉄改革」:経営のヒントになる1冊
国鉄が分割民営化して20年以上経つ。かつては日本を揺るがすほどの盛り上がりをみせていた労働者運動も、「国鉄崩壊」と時を同じくして衰退していった。その歴史の裏側にはいかなる攻防があったのか。
日本の労働運動の歴史において高揚期と呼べる1960〜1970年代。労働者の権利を守る「運動」の勢いは国政にまで及び、労働組合が推す社会党の力を強大なものにしていた。しかし1980年代に入り、中曽根康弘内閣が打ち出した大改革「国鉄分割民営化」によって政府が国鉄解体に突き進む中で、労働運動そして社会党の影響力は急速に衰退していく。
なぜ、国鉄分割民営化が労働運動や社会党の力を衰退させたのか? そこには、既得権と思想をめぐる労組間の激しい内部抗争、いびつな労使関係、そして55年体制崩壊を図る政府の思惑があった――。国鉄労働組合(国労)元幹部の著者は語る、「JRが発足した日、それは日本の労働運動が死んだ日である」と。
24万人を擁した日本最大労組、国労の幹部として、労働運動の高揚期と衰退期を目の当たりにし、国鉄分割民営化にあらがい屈した著者。本書には、知られざる巨大労組盛衰の理由、国鉄改革の裏側、そして日本の労働運動の転換期が描かれている。JR発足1年前のあの日、すでに崩壊への「切符」は切られていた……。敗者側から初めて語られる国鉄改革史であり、「労働者の権利」を守るための苦闘の記録である。
非正規社員が1700万人。「派遣切り」など労働弱者切り捨てが社会問題化する今、著者の半生と国鉄改革をめぐる闘いを通して、労働者の権利とは何かをあらためて世に問う。
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