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休暇を喜ぶ従業員、「休みが怖い」と語る経営者問われるコーチング力(2/2 ページ)

「ビッグスリー」の一角である米自動車大手・クライスラーが破たんするなど、昨秋以来の経済危機は大きな爪痕を残している。売り上げ拡大の機会損失になるという理由から、「大型連休が怖い」と語る経営者もいるという。

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自分の権利だけを主張するな

 2点目は、自分のことだけを考えている人が増えているということである。成果主義人事が導入され、短期の利益が重視されていたころは、自分の数字を上げるために有効な情報をほかのメンバーに隠したり、チーム内で足を引っ張り合うようなことは日常茶飯事だった。最近ではこれまでの風潮とは異なり、チームのメンバーが助け合い、協力し合うことが重視されている。自分さえよければいい、人をけ落としてでも成功すればいいという考えを持つメンバーがいる組織は、今後生き残れないだろう。

 Chryslerの経営者は数十億円という破格の給料をもらっていたが、社員も業界水準から見てとても高い給料をもらっていたという。経営危機が明るみになったとき、給料を下げることを拒み、赤字の膨張に拍車を掛けた。会社のために全員で協力して再建を目指すという意識を持ち合わせておらず、自分本位になっていたと言わざるを得ない。

 お客様が何を望んでいるかを追求し続け、お客様のニーズに応える商品やサービスを提供することが企業の使命である。この使命をまっとうしようとすることが結果的に、商品やサービスを売り、会社の利益が出て、社員の給料が上がることにつながる。この仕組みを無視して、自分の権利だけを主張するべきではない。

 資本主義には自由があり、それを主張する権利がある。一方で、自由を主張するのであれば、自分が果たすべき義務もある。それを無視し、お客様のことを考えずに自分の権利だけを主張していたら、企業としては立ち行かなるはずである。

人を育てるのが管理職の役目

 上述のような状況を考えると、これまで以上に社員教育が大切になってくる。ここでの教育とは、単に業務を行う技術や業務の流れを教えるということではない。組織やチームにビジョンを植え付け、どのような意識を持って仕事に取り組むのかという心構えや姿勢について教育する必要がある。特に一般社員から課長などの管理職の地位に昇進した人には、強い意識変革が必要だということを申し上げたい。これまで通り、自分だけの仕事をしていては、チームとして成果は残せない。管理職の地位についた人が何よりもすべきことは人を育てることだということを肝に銘じて欲しい。

 Chryslerのような名門企業も窮地に立つ時代である。時代の流れを読み間違えると大変なことになる。自分の利益だけを考えるのではなく、お客様のニーズを考え、お客様に満足してもらえる製品をつくるには何をすべきかを絶えず追求していく――そんな基本に立ち戻る必要があると痛感している。


連載「問われるコーチング力」の過去記事はこちら




著者プロフィール

細川馨(ほそかわ かおる)

ビジネスコーチ株式会社代表取締役

外資系生命保険入社。支社長、支社開発室長などを経て、2003年にプロコーチとして独立。2005年に当社を設立し、代表取締役に就任。コーチングを勤務先の保険会社に導入し、独自の営業システムを構築、業績を著しく伸ばす。業績を必ず伸ばす「コンサルティングコーチング」を独自のスタイルとし、現在大企業管理職への研修、企業のコーポレートコーチとして活躍。日経ビジネスアソシエ、日経ベンチャー、東商新聞連載。世界ビジネスコーチ協会資格検定委員会委員、CFP認定者、早稲田大学ビジネス情報アカデミー講師。



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