心の対話を交わし続ける――「わが子を経営者に育てる17の極意」:経営のヒントになる1冊
経営者二世に足りないもの、それは経営に関する能力や資質ではなく、本人の気付きや自信にほかならないという。
帝王学とは心の学問である――。本書は数々の経営者二世を指導、教育してきた著者が、実際に彼らに語り掛けた優しい言葉でつづり、ポジティブ思考によるユニークな考え方を紹介している。
経営者二世を育成するには、(1)経営者としての自信を養う、(2)経営者としての自覚を持たせる、(3)経営者としての日常管理を説く、(4)経営者に必要な必須能力を磨く、という4つのステップがあり、その中でリーダーとして育成するための17の極意を挙げている。
極意の1つに「寝ないを前提にさせれば仕事がはかどる」というものがある。よく健康に関する本などで「最低でも一日6時間は睡眠を取るべき」とあるが、著者は経営者二世に対しこうした先入観を捨てて「24時間寝ないこと」を基本にすべきだと述べている。そうすることで心理的に大きな変化が生まれる。
例えば、仕事や遊びによって睡眠時間が3時間だったとする。一般的に人々は「たった3時間しか寝られなかった」ととらえ、ネガティブな気持ちを抱く。しかし、眠らないことを前提にすれば「3時間も睡眠できた」と幸せな気分になれるはずだという。ちょっとした発想の転換や行動の変化が、優れたリーダーになれるかどうかの分かれ道となる。
本文に引用されている調査によると、経営者の子息が後継者になることを拒む理由の1つに「自分には経営する能力や資質がない」ということが挙げられている。これに対して著者は「本人に能力や資質がないわけではなく、自信を持てずにそう思い込んでいるに過ぎない」と指摘する。裏を返せば、彼らにそのことを気付かせ自信を持つきっかけを与えれば、経営者としての一歩を踏み出せるというわけだ。そのためには、彼らと同じ目線で語り、決して押し付けでない心の対話を重視した生育が不可欠だという。
オーナー経営者や経営者二世のみならず、子どもの教育方法を模索する人たちにも響く一冊といえよう。
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