数理学者の知見を最大限に生かす IBMが経営分析の新サービス
経営におけるデータ活用の重要性が叫ばれる中、日本IBMはコンサルタントと研究員の協業によるビジネス分析の新サービスを発表した。
日本IBMは7月8日、企業のビジネス分析やビジネス最適化を支援するサービス「ビジネス・アナリティクス・オプティマイゼーション(Business Analytics and Optimization:BAO)」を発表した。
新サービスは、IBMが提供しているCognosのビジネスインテリジェンス(BI)ツールやILOGの業務ルール管理システムといったIT技術と、同社・東京基礎研究所の研究員が持つ数理最適化や自然言語テキスト分析など高度な分析技術をプラットフォームに、さまざまな業界に対して経営におけるデータの戦略的な活用を提示する。例えば、金融分野における顧客データ管理や信用リスク管理、製造分野における品質保証分析や在庫最適化など、業界に特化したソリューションを強みとする。具体的には、企業における情報活用の成熟度診断から始める。
IBM ビジネスコンサルティング サービス(IBCS)の執行役員 パートナーでBAO担当の赤阪正治氏は「IBCSのコンサルタントと数理分析などで実績を持つIBMの研究員が密に協力してサービスを提供できるようになった」と新サービスのメリットを強調する。これまでも同様のサービスは存在したが、部門ごとに散在しており顧客から分かりにくいという声もあったという。
既に7月1日付で253人のコンサルタントから成るBAOの組織を立ち上げるとともに、東京基礎研究所や大和ソフトウェア研究所、インフォメーション・マネジメント関連のソフトウェア事業部門に所属する研究者や専門家、コンサルタントなどとの協業も強化している。東京基礎研究所の森本典繁所長は「経営者は不完全な情報に基づいて重大な判断を下さなければならないケースがある。これはリスクが高い。われわれが目に見えないものをデータ分析によって可視化し解析することで、経営判断の材料に生かすことができるのだ」と意気込む。
7月15日には、BAOに関する顧客の課題解決策を提示する窓口拠点として「アナリティクス・ソリューション・センター(Analytics Solution Center:ASC)」をIBCSの丸の内オフィスおよび大和研究所に設置する。ASCは、T.J.ワトソン研究所(米国)やチューリッヒ研究所(スイス)など世界8カ所のIBM基礎研究所のほか、ニューヨーク、ワシントン、ロンドン、ベルリン、北京に設立されるASCと接続し、日本の顧客をグローバル規模で支援できるようになる。
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