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【第6話】仕事の優先順位内山悟志の「IT人材育成物語」(2/2 ページ)

ようやく大局的な課題が洗い出され、検討テーマが決定した。川口は、勉強会の初回から頭をフル回転させてアイデア出しを行った2人を慰労しようと会社近くのいきつけの食事処に誘った。

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仕事には2種類ある

 「仕事の進め方には個人差がある。『あの人は仕事ができる』とか『仕事が速い』と言われる人は、仕事の内容に対する知識や経験が優れているからということだけでなく、仕事の進め方の上手さというのもあるのだと思う。中でも、複数の仕事を掛け持ちでこなさなければならないとき、仕事をどのように優先順位付けするかが重要なポイントとなるのではないかな」

 川口は具体的な説明を加える。「僕は仕事には、『自分で完結する仕事』『誰かが待っている仕事』の2つがあると考えているのだよ。自分で完結する仕事というのは、一定の範囲で仕事を任されていてほかの人と協力せずに一人で最後まで行う仕事のこと。一方、誰かが待っている仕事というのは、一連の仕事の流れの中に自分の仕事が組込まれていて、自分の仕事が終わったらそれを引き継いで誰かが次の仕事をするというものだ。例えば、システムの企画書を作成する場合、もしすべてを1人で一定の期日までに仕上げればよいのであれば、それは自分で完結する仕事だ。ある一部分の作成を任されていて、それを受けて別の人が次の章を作成したり、それらを別の誰かが取りまとめるというのであれば、誰かが待っている仕事といえる」

 「なるほど、僕らの仕事の場合、誰かが待っている仕事の方が多いですね」と宮下が口を挟んだ。

 川口は続けた。「僕の場合、誰かが待っている仕事を優先する。自分が一連の仕事のボトルネックにならないためにね。次の人に仕事を引きわたすのが1日でも早ければ、次の人に余裕ができる。そして喜んでもらえる。ほかの人から見た時の見かけ上のスループットが上がるということだ。実際のやる仕事の量は変わらないので、仕事に費やす時間が減るわけではないけど、チーム全体のパフォーマンス向上に貢献することができる。実は、複数の仕事を抱えているとき、どれから手をつけようかと悩んだり、1つの仕事をしている時に別の仕事のことが気になってしまうことでロスする時間は思いのほか多く、無視できないものなんだ。頭の中でしっかりと優先順位付けができて切り替えができること、仕事に取り掛かったら集中できることがポイントだ」

 宮下も奥山も、川口の論理的でありながら熱のこもった話を、真剣にそして楽しく聞いた。川口の仕事術に対する2人の質問攻めはしばらく続いた。


著者プロフィール

内山悟志(うちやま さとし)

株式会社アイ・ティ・アール(ITR) 代表取締役/プリンシパル・アナリスト

大手外資系企業の情報システム部門、データクエスト・ジャパン株式会社のシニア・アナリストを経て、1994年、情報技術研究所(現ITR)を設立し代表取締役に就任。ガートナーグループ・ジャパン・リサーチ・センター代表を兼務する。現在は、IT戦略、IT投資、IT組織運営などの分野を専門とするアナリストとして活動。近著は「名前だけのITコンサルなんていらない」(翔泳社)、「日本版SOX法 IT統制実践法」(SRC)、そのほか寄稿記事、講演など多数。



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