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谷から這い上がれるか?問われるコーチング力(1/2 ページ)

民主党による衆議院選挙の圧勝によって、自民党は山の頂きから谷に落ちた。なぜこのような事態になったのか、どうしたら這い上がれるのか、これを機に自分の行動を見つめ直してもらいたい。

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 8月30日に行われた第45回衆議院議員総選挙で、民主党が308議席を獲得して勝利を収めた。この政権交代を目の当たりにし、ビジネスコーチングに携わる者として思うことがあったのでお話したい。

 人生には山(=良いとき)もあれば、谷(=良くないとき)もある。ある人が谷からスタートし、山頂を目指して登り続けていた。彼は一生懸命努力し、勉強し、仕事にも熱心に取り組んだ。そしてようやく山の頂上にたどり着いた。しかし、ある時、ささいな失敗から足を滑らせてしまった。気付いたとき、彼は再び谷にいた。

 山を登るには多くの時間がかかるが、山から谷に落ちるのは一瞬なのである。

 ピーター・ドラッカーは18歳のときにある言葉に触れた。「アイーダ」など数々のイタリアオペラを作曲した作曲家のジュゼッペ・ヴェルディの言葉である。彼は、80歳で歌劇「ファルスタッフ」を作曲したときに「わたしは完全を求めてきた。だからこそ挑戦する責任があった」と述べている。ヴェルディは18歳ですでに音楽家として名を上げていたが、18歳のドラッカーは何をしたいのか分からず、人生に迷っていた。彼は、このヴェルディの言葉を道標にしようと決心したという(『ドラッカー 365の金言』(ダイヤモンド社)より)。

 この話を読んで、わたしも大きな感銘を受けた。人は常に成長し、学び続けなければならないと肝に銘じたのである。

山の上であぐらをかいていた自民党

 今回の選挙では、海部俊樹氏や中川昭一氏など、自民党の多くの大物議員たちが敗れた。自民党は長い間山頂にいて、そのことが一部の議員に傲慢(ごうまん)さやおごりを生み出したのかもしれない。辛うじて勝利したベテラン議員たちの中には、今回久しぶりに地元に行き、汗水たらして遊説した人もいたと聞いた。

 長年、山頂にいた人間が谷に落ちた。なぜこのような事態になったのか。彼らは長い間、安泰な地位が約束されていた。そこに安住してしまったのではないか。加えて、国民の声に耳を傾けなかったのではなかろうか。経済状況が苦しく明日の暮らしさえままならない、働きたくても働けない、そのような現状を実際のものとして理解していなかったのだ。

 自民党による行政改革も郵政改革も、何をしたいのかが明確に見えてこなかった。そうした事態に国民は腹を立てたのだ。敗北のサインはここにあった。一昨年に行われた参議院選挙での敗北、数々の地方選挙での敗北など、多くの予兆はあった。しかし、それに気付かなかったのか、見て見ぬふりをしたのか分からないが、最終的には楽観視していたのである。

 歴史に「仮に」ということは禁句だろうが、もし仮にそのときに前兆に気付き、「これではいけない」と思って何か行動を起こしていたならば、状況は変わっていたかもしれない。

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