ビジネスパーソンのための「図を使って思考を磨く技術」:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
相手の話が分かりにくい、もっと簡潔に説明してほしいと思ったことは誰しもあるだろう。ものごとを整理して、分かりやすく伝える方法として「図」を活用する方法は意外と知られていない。
広がる問題解決の可能性
以前、次のような課題に対して、ITコンサルティングやITヘルプデスクサービスを提供しているコンサルタントに実際に考えてもらう機会がありました。
クライアント先企業の担当者から、「業務効率が悪くて困っている」という悩みを聞き、その原因を探るべく、ヒアリングを実施しました。調査をしていくと、顧客からの問い合わせ対応が多く、時間がとられていること、また社内で使っているITツールのトラブルが多いことが分かりました。中でも、ITツールのトラブルが起きたときの社内の問い合わせ先が統一されておらず、解決できる人を探すのに、電話をたらい回しにされて時間を浪費するのが多いことが判明しました。あなたなら、この課題に対し、どのような解決策を考えますか。
いかがでしょうか。実はこの例題、図を使って考える前は、大半の人は「電話をたらい回しにされないように、ヘルプデスクを設置する」と答えました。ITヘルプデスクにかかわる方たちの回答ですから、当然です。
次に、図の「因数分解のパターン」を使ってこの問題を考えてもらいました(図1)。この図は大きな目標や複雑な問題を分解して考えるために使います。使い方は、まず達成したい目標や問題となっている課題を書き、その下に構成要素となるアイデアや解決策をツリー状に分解しながら書いていきます。
先ほどの問題を、この因数分解のパターンを使って考え直してもらうと、一つ一つの課題に対してさらに提案の余地があることが分かりました。「顧客からの問い合わせ対応が多い、ということに対してFAQのサービスを開始する」や、「ITツールがトラブルを引き起こしているのだからそれ自体を変更する」など、新たな解決策に気付くきっかけになったのです(図2)。
意識せずに考えると、わたしたちは概して自分が得意な分野のこと、専門領域のことにばかり目がいきがちです。しかし、図にすることによって、思考の幅を広げたり、情報を整理することが簡単にできるようになります。このように、図を活用することで、自分だけでなく部下やクライアントに対しても、より効果的な指導や提案をできるようになるのです。
拙著「図で考えるとすべてまとまる」では、この「因数分解のパターン」を含め、7つの図の基本パターンを紹介しています。図のパターンを知るということは、「考え方のパターン」の引き出しを増やすということです。7つの基本の図の使い方を覚えることで、ビジネスリーダーに必須の思考パターンが身に付くので、ぜひ試してみてください。
著者プロフィール
村井瑞枝(むらい みずえ)
世界トップクラスのアートスクールで学び、JPモルガン、ボストンコンサルティンググループにてキャリアを積んだ異色のコンサルタント。高校卒業後、辻調理師専門学校にて調理師免許取得後、米国ブラウン大学に入学、アートを専攻する。在学中、イタリアボローニャ大学、「美大のハーバード」と呼ばれるRhode Island School of Design(RISD)に姉妹校留学し、アートを学ぶ。
大学卒業後は、そのユニークな経験を買われ、JPモルガンへ入社。その後、ボストンコンサルティンググループにアソシエイトとして入社し、1年9カ月というスピードでコンサルタントに昇進。約1万枚以上のプレゼン資料を作成し、ビジネスで使えるアートのテクニックとして図の技術を習得。現在はミシュラン3ツ星レストランを運営するレストラングループにて、戦略プロデューサーとして活躍。
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