パナソニックのグローバル戦略を支えるクラウドサービス:Lotusphere 2010 Orlando Report
グローバル全体で38万ユーザーに及ぶ大規模なコミュニケーションシステムを導入したパナソニック。背景には同社が推し進めるグローバル戦略が存在する。
1月19日(現地時間)、フロリダ州オーランドのウォルトディズニーワールドで開催しているIBMの年次カンファレンス「Lotusphere 2010」は2日目を迎えた。初日の朝よりもさらに冷え込んだ会場では、コートやマフラーなどを身にまとった参加者をちらほらと目にした。午前の基調講演では、昨年のLotusphereで発表された同社初のクラウドサービス「LotusLive」を38万ユーザーで活用するパナソニックの大型導入事例が紹介された。
パナソニックは「経営の神様」とうたわれた松下幸之助氏が創業して以来、「生産・販売活動を通じて社会生活の改善と向上を図り、世界文化の進展に寄与すること」を経営理念としている。従って、海外展開は早く、1959年にアメリカ松下電器(現・米Panasonic)を設立し、その後、1967年までにタイ、メキシコ、コスタリカ、ペルー、タンザニア、マレーシア、オーストラリアなどにも進出している。近年ではグローバル戦略の強化策として国内外のブランドを「Panasonic」に統一し、企業名も松下電器からパナソニックに変更した。
全世界で数百の拠点を持つパナソニックでは、組織のみならず地域の枠をも超えた社員同士のコミュニケーションは日常的であり、避けては通れない。では、いかにコミュニケーションを促進し、事業成功に向けたコラボレーションを生み出していくのか。そこで白羽の矢が立ったのがIBMのLotusLiveである。
LotusLiveを活用し「One Panasonic」を目指す
前日のビデオ映像での登場に続き、今度は実際に基調講演のステージに現れた米PanasonicでITディレクターを務めるガス・バハモンデス氏は、LotusLiveの採用理由について「プラットフォームの統合」と「TCO(総所有コスト)の削減」を繰り返し強調した。特に前者については、同社が掲げる目標の達成には外せないものだという。
バハモンデス氏によると、パナソニックはグローバル全体で1つの企業体となる「One Panasonic(1つのパナソニック)」を目指しており、企業変革を遂げる上で、(1)ワークスタイルやコラボレーションの革新、(2)コミュニケーションを地域間で促進、(3)消費者やパートナーとのコミュニケーションを促進、(4)グループ全体でのシナジー効果、は不可欠だと考えている。これらを実現するには各事業で共通のプラットフォームが必要であり、クラウドベースで提供されるLotusLiveは、まさにグローバルなワークプレイスに置き換わるという。
大規模導入の背景にはトップダウンも働いた。「大坪文雄社長もコラボレーションの重要性を理解しており、それを実現する仕組みに必要性を感じていた」とバハモンデス氏は明かす。
三洋電機の買収が昨年末に完了し、2010年から新生パナソニックが本格始動している。約800のグループ会社、38万人の社員を抱えることとなった。バハモンデス氏は「(LotusLiveを軸とした)IBMのソリューションによって、さらにOne Panasonicに近づきたい」と力を込めた。
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