ただ定年を待つばかりのIT部門長は不要だ:売り上げ増に直結するIT部門の作り方(3/3 ページ)
後ろ向きな気持ちで仕事をするようなIT部門とはもうおさらばだ。活気あふれるプロフィット部門にするためにも、IT部門長は何事もなく定年を迎えようなどという甘い考えは捨てよう。
中国でのシステム導入プロジェクトで学んだ
どうしたら中国で売り上げを伸ばせるのだろうか。まずは、どのようなビジネスが効果的なのかを早急に調査し、そのPDCAを回すための情報提供と戦略シミュレーションを行う仕組みをIT部門として提供し、当面はIT部門のトップを現地に派遣すべきである。
中国と聞いただけで難しいと思う人が多いだろう。かつて、わたしも中国でERPシステムの導入を行った経験がある。中国に出張した人から、中国人は時間にルーズだとか、指示したことをやらない、システム導入をしても正しく伝票入力しないなどという話を聞いていた。システムを導入しても定着なんて、夢のまた夢であるというのが常識だといわれていた。しかし、何事も自分の目で確かめてみるべきである。もしそれが事実だとしたら、中国で収益を上げるのは日本企業には不可能ということになる。
一方で、そういう風土や国民性の中国がどうして世界一の成長を続けているのかを考えるべきである。わたしが中国滞在中に得た教訓は、中国人のポテンシャルは素晴らしいということだ。本気でビジネスに取り組まれたら日本企業はあっという間に追い抜かれてしまう。彼らは優秀でお金もうけに対する執着心が強い。中国人の価値観は会社の利益ではなく自分の利益である。自分の利益になると分かれば素晴らしい力を発揮するのだ。
中国でのERPシステムの導入プロジェクトは、当初、現場の本当の課題を見抜かずに日本流のシステム導入、移行を行ったため苦心した。その後、現場の業務にまで踏み込んで本質をとらえ、生産計画の変更に柔軟に対応できるITの仕組みを構築し、それを現場で運用・保守する人材を育成したことで、見事システム導入は成功した。
中国人のITマネジャーを本気にさせるのに2カ月もかかったが、彼はこの生産管理の仕組みの運用と業務改善の関係、ITの本質を習得することがキャリアアップになると理解し、積極的にシステムの定着に奔走してくれた。今ではマンションやマイカーを所有するエリート社員になっている。
このように現場社員に業務改善を促し、人材を育ててやろうという強い意思がなければ、もうかるITは実現できない。IT部門長は、何事もなく定年を迎えようなどという考えは捨てて、知恵と行動力と気力あふれる人材を残すことにぜひチャレンジしてほしい。
本連載の著者である岡政次氏も登壇する「第14回 ITmedia エグゼクティブセミナー 売上アップに即効! 今求められる真の情報システム改革とは?」のお申し込み・詳細はこちら。
著者プロフィール
岡政次(おか まさじ)
ウイングアーク テクノロジーズ株式会社 バリューエンジニアリング部
1977年シャープ株式会社に入社。本社IT部門に在籍し、10年強の新人教育、標準化・共通システム化を担当。さらにシステム企画担当として、ホスト撤廃プロジェクト、マスター統合、帳票出力基盤の構築等に携わる。
2007年4月、ウイングアークテクノロジーズ株式会社に入社。現在、企業のアウトプットの最適化ソリューション「OPM(Output Performance Management)」の提案活動を展開中である。
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