【第17話】施策の評価:内山悟志の「IT人材育成物語」(2/2 ページ)
部長たちへのプレゼンテーションに向けて、4人はこれまで洗い出した施策を評価し、有効な施策をしぼり込んで提言することとなった。川口は施策の有効性を評価するための軸を考えるよう4人に指示した。
評価体系の作成
川口は、奥山がまとめた評価軸を縦軸と横軸に当てはめて、2次元のマトリックス図を描き説明した。
「事業への貢献度が大きく、実行の難易度が小さい施策、この図で言えば右上の象限に位置付けられた施策が優先して取り組むべき施策ということになる」
「なるほど、こうすればそれぞれの施策の優先順位が分かりやすく表現できますね。一目瞭然という感じです」と奥山が感心してうなずいた。
しばらく黙っていた宮下が口を開いた。
「それぞれの評価項目の間で、重みの違いがあるとしたらどうでしょう。例えば、『売上げの増加』や『コストの低減』は、事業への貢献度に対して直接的ですが、『業務の効率化』や『業務の品質向上』は間接的なので、その影響度が違うように思うのです」
少しの沈黙を破って阿部が「確かにそうですね。それでは小項目を評価して、それを合計するときに重みを付ければいいのではないでしょうか」
「グッドアイデア! そうしましょう」と奥山が立ち上がって、川口の描いた図の横に、重み付けを示す表を書き加えた。こうして、解決策を評価する体系が出来上がった(図2)。
著者プロフィール
内山悟志(うちやま さとし)
株式会社アイ・ティ・アール(ITR) 代表取締役/プリンシパル・アナリスト
大手外資系企業の情報システム部門、データクエスト・ジャパン株式会社のシニア・アナリストを経て、1994年、情報技術研究所(現ITR)を設立し代表取締役に就任。ガートナーグループ・ジャパン・リサーチ・センター代表を兼務する。現在は、IT戦略、IT投資、IT組織運営などの分野を専門とするアナリストとして活動。近著は「名前だけのITコンサルなんていらない」(翔泳社)、「日本版SOX法 IT統制実践法」(SRC)、そのほか寄稿記事、講演など多数。
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