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今年は「宗侍」小松裕の「スポーツドクター奮闘記」(2/2 ページ)

毎年恒例となっている、ソフトバンクホークスの川崎選手率いる軟式野球チームの試合に参加してきました。故郷の人たちに対する彼の感謝の思いを改めて感じました。

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決して手を抜かない真剣勝負

「それでは先発メンバーを発表する」――。ベンチ前に集合したメンバーを前に川崎監督が続けます。「1番ピッチャー川崎、2番…………、8番レフト小松」。やった、先発メンバーです! 昨年は満塁のチャンスで走者一掃のタイムリー二塁打を打ったからなあ。きっとそれが認められたのでしょう。初めての先発です。

 わが宗侍の打線は初回から大爆発、相手のミスもあって大量点を奪いました。守ってもエース川崎の快投と安定した内野陣で得点を許しません。わたしも一生懸命に戦っている子どもたちに失礼ないように、緊張しながら真剣に守りました。でも、ピッチャーがまともだから外野にはあまり球が飛んでこなくて一安心。結局、わたしは3打数ヒットなしでしたが、1本だけ飛んできたレフトフライを何とかキャッチ。試合も宗侍の大勝で開幕戦を飾ったのでした。

 試合の途中、中学生チームはベンチの中で直立不動のまま監督から説教されていました。恐らく、「川崎選手たちが全力で手も抜かずに戦ってくれているのに、お前たちのその不甲斐なさは何だ!」という檄だったのだと思います。中学生たちは人気スターである川崎選手の投げる球を打てるだけでも満足なのかもしれません。しかし、中学生相手でも一生懸命に戦うという川崎監督のポリシーの下、宗侍のメンバーはベンチでも大きな声を出し、どんなことでも手を抜きません。そこには「おれの姿を見てお前たちも頑張れ」という川崎選手のメッセージが込められているのです。

 川崎選手の姿を見ていると、単なる「ファンサービス」の域を超えていることに気付きます。自分を育てくれた姶良町、活躍を楽しみにしてくれている家族、いつか川崎選手のようになろうと頑張って練習する野球少年たち、日ごろ支えてくれる裏方さんたちといったそれらすべてに対して感謝の気持ちを示すとともに、彼らの思いに対しても応えてくれます。ですから、全員が「川崎のために」という気持ちになります。グラウンドでのプレーももちろんですが、こういった姿勢にもファンは魅せられるのです。

 翌日の自主トレには読売ジャイアンツの伊集院峰弘選手が合流し、わたしも彼らと一緒に階段トレーニングなどのメニューをこなしました。もちろん若いプロ野球選手たちと同じようにはできないけれど、最後まで一生懸命やりました。おかげでくたくたになりましたが、達成感とともに今年は何か良いことがありそうな予感がしたのでした。

川崎選手(左)と筆者
川崎選手(左)と筆者

世界を駆け回るドクター小松の連載「スポーツドクター奮闘記」、バックナンバーはこちら



著者プロフィール

小松裕(こまつ ゆたか)

国立スポーツ科学センター医学研究部 副主任研究員、医学博士

1961年長野県生まれ。1986年に信州大学医学部卒業後、日本赤十字社医療センター内科研修医、東京大学第二内科医員、東京大学消化器内科 文部科学教官助手などを経て、2005年から現職。専門分野はスポーツ医学、アンチ・ドーピング、スポーツ行政。



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