アフリカ人を惑わす中国製品:「世界一蹴の旅」からすべて教わった(2/2 ページ)
ガーナやコートジボアールなどアフリカ諸国に訪れて驚いたのは、現地の人々の日常生活に中国文化が深く入り込んでいることだ。
This Is Africa!
ところで、読者の皆さんは「TIA」という言葉をご存じだろうか? 「ティー・アイ・エー」と発音し、「This Is Africa」の略語である。アフリカでのビジネスや旅行などで、おおよそ先進国では起こり得ないようなトラブルに巻き込まれたとき、「TIAだからしょうがないよね…」というようにネガティブな意味として、欧米人やわれわれのような非アフリカ人の間で使われている。
このアフリカの旅の道中でもトラブルに何度も直面し、そのたびにTIAという言葉を使ってきた。上述したように基本的には否定的な意味で使うわけだが、一度だけポジティブに活用されている場面に遭遇した。それは南アフリカのケープタウンにて、ワールドカップ本大会の組み合わせ抽選会の様子を生中継する野外イベントでのことだった。
イベント会場には地元の人たちだけでなく、アフリカ各国からも多くの観光客が集まっており、アフリカ初のワールドカップ開催に向けてヒートアップしていた。そこで、会場のステージに上っていたバンドのボーカル兼MCが叫んだ。
「T・I・A! This Is Africa!」
それに呼応するように、観衆のアフリカ人たちも一斉に叫んだ。その叫び声には「これがアフリカだ!」「ワールドカップ史上初のアフリカ開催だ!」という誇りや自信が満ちあふれていた。
「俺たちにもできる!」――。われわれがコートジボアールで感じた 「自信のないアフリカ人」は、もうそこにはいなかった。今回のワールドカップ招致は、南アフリカだけではなく、アフリカ大陸全体に影響を与えている。大会が無事に成功を収めれば、確実にアフリカの人たちの自信を深めることになるだろう。経済においては急成長著しいBRICsに遅れを取っているアフリカ諸国だが、彼らに自信がつけばポテンシャルはサッカー同様に高いはずなので、将来の成長が十分に見込めるだろう。ぜひワールドカップ後のアフリカにも注目したいところだ。
そんな中、アフリカ各国における日本のプレゼンス(存在感)はどうか。またも中国の後塵を拝してしまうのか。アフリカに限った話ではないが、日本が行っている各種支援において、日本が現地の人々にアピールしているケースは少ない。それに対して、中国や韓国はその手の「宣伝活動」をうまくやっていると感じる。このポテンシャルの高いアフリカの地において、もっと日本の存在感を出すべきではないかと思う。
さまざまな思いをめぐらせながら、アフリカの地を発ち、次の目的地であるオセアニア大陸へ向かった。
連載「世界一蹴の旅からすべて教わった」の過去記事はこちらよりご覧いただけます。
著者プロフィール
アシシ(左)とヨモケン
アシシ:1977年生まれ、北海道出身。大学卒業後、外資系コンサルティングファームに入社。6年勤めた後、ドイツワールドカップ現地観戦を理由に退職。その後、中田英寿の影響を受け旅人デビュー。半年仕事、半年旅人のライフスタイルも2009年で4年目に突入。自遊人布教活動を推し進める血気盛んな31歳。twitterアカウントは「atsushi_libero」。
ヨモケン:1979年生まれ、神奈川県出身。1998年、大学入学直後に日本代表とともに初めてワールドカップ(フランス大会)を体験。2002年、日韓ワールドカップをEnjoyし尽くして、同年、外資系コンサルティングファームに入社。2006年のドイツワールドカップを現地観戦後、同社の中国オフィスへ転籍。人生のマイルストーンをワールドカップイヤーに重ねながら、現在はフリーランスのコンサルタント兼旅人を満喫中。twitterアカウントは「yomoken2002」。
「世界一蹴の旅」の概要や彼らの日々のブログはこちら。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「世界一蹴の旅」からすべて教わった:台頭する中国のエリート世代、そのとき日本は
急激な経済成長を遂げた中国では、富裕層が増加し、彼らの子どもで英才教育を受けた80后、90后と呼ばれる若者がビジネス社会に進出してきている。それに対して、日本の若年世代は……? - 「世界一蹴の旅」からすべて教わった:北朝鮮に向かう列車の中で……
国境を越えるべきか否か――。さんざん悩みぬいた結果、われわれは中国遼寧省の丹東から北朝鮮の首都・平壌への列車に乗り込んだのだった。 - 「世界一蹴の旅」からすべて教わった:南アフリカで痛感した「自己責任」の重要性
ブラジル代表の優勝で幕を閉じたFIFAコンフェデ杯。開催地となった南アフリカでは、来年のW杯本番に向けてスタジアム建設などが急ピッチで進む一方で、治安の悪さを懸念する声も聞こえる。現地の今をレポートする。 - 世界で勝つ 強い日本企業のつくり方:「地方へ販路を拡大し国産ブランドからシェアを奪う」――ソニーチャイナ・永田社長
中国市場においてテレビの販売シェアで国産ブランドに遅れをとっている外資企業。ソニーは地方都市への販売ネットワークを拡張するとともに、独自の戦略で顧客増を狙う。 - 世界で勝つ 強い日本企業のつくり方:「ローカルに根ざさないと愛されない」――ファミリーマート・井上常務
20年以上も前に海外進出を果たしたファミリーマートは着実に出店数を積み上げ、ついには昨年、日本発祥のコンビニとして初めて海外店舗数が国内店舗数を上回った。しかし一朝一夕に成し遂げられるものでは決してなかった。