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【第2回】内陸部で台頭する中国企業――中国市場で戦うための心構え世界で勝つ 強い日本企業のつくり方(3/3 ページ)

中国消費者の日本に対する意識、そして日本企業のライバルとして台頭してきている中国企業の状況について、現地での調査結果を基に明らかにしていく。

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価格ではまったく勝負できず

 自動車以外でも内陸部市場で力をつけて台頭する国産メーカーが数多く出てきている。ブラウン管テレビからの買い替えによって、中国の2009年の液晶テレビの中国市場(台数ベース)は対前年比8割増という世界最大の市場となっている。2009年前半の液晶テレビの中国市場における国産メーカーの販売シェア(台数ベース)は約7割となり、2008年第一四半期の4割からわずか1年強で国産シェアは急上昇している。

 ここまで国産メーカーのシェアが急上昇した最大の理由は内陸部市場の台頭である。現在、この市場の高成長をけん引するのは内陸部のネクストリッチ層であり、中国メーカーはそのマーケットにフィットする3000元〜5000元の廉価商品を持っている。韓国や日本の家電メーカーも価格の引き下げに走ったが、中国メーカーの価格帯には到達できていない。

 筆者が内陸部のある家電量販店(陜西省宝鶏市)を訪れた際も、日本メーカーの売場にはほとんど客はなく、もっぱら中国メーカーの売り場に人々が集まっていた。日本メーカーの売り場の店員は「この値段では中国メーカーとの製品の差を説明しきれない」と嘆いていた。当然ながら日本メーカーの製品機能は優れているし、耐久性能も優位にあると思われるが、その優位性を正当化する以上に価格の差がついてしまっている。

 本格的な国有経済の解体を始めた1997年から中国はまだ12年しか経過していない。多くの民営企業がホームグラウンドの内陸部市場で力をつけ、外資企業とも戦える競争力を発揮してくるのはこれからである。自動車のような総合的な技術力が問われる分野においても中国企業が続々と台頭してくるだろう。

 さて次回はこのシリーズの最終回。ここまで内陸部の消費者や台頭する中国企業について述べてきたが、日本企業はこの市場にどう立ち向かうのか、戦略立案時の留意点についてまとめてみたい。

著者プロフィール

此本臣吾(このもと しんご)

株式会社 野村総合研究所 執行役員 システムコンサルティング事業本部 副本部長

1985年3月、東京大学大学院修了。同年4月に野村総合研究所 産業経済研究部に入社。アジア事業開発部 上級専門職、台北事務所長、産業コンサルティング部長、技術・産業コンサルティング部長、コンサルティング第二事業本部 副本部長 兼 情報・通信コンサルティング部長を経て、2004年4月に執行役員 コンサルティング第三事業本部長 兼 アジア・中国事業コンサルティング部長。2009年4月より現職。

著書に「戦略的BPO活用入門」(監訳、東洋経済新報社)、「2015年の中国」(編著、東洋経済新報社)、「2010年のアジア」(共著、東洋経済新報社)など。



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