【第19話】施策を練り直す:内山悟志の「IT人材育成物語」(2/2 ページ)
施策を絞り込む過程で、新規のシステムを構築することよりも、ITを最大限に活用する企業風土を築くことが今のあかり食品には重要だと気付いた4人は、再度課題を整理し直し、施策を練り直し、ようやく結論を導き出した。
提言への落とし込み
川口は、4人が結論を導き出すまでの討議を黙って聞いていたが、課題と解決策の関係付けが出来上がったところで満足げな表情を浮かべながら、ようやく口を開いた。「どうやら結論が出たようだね。なかなか良い結論が導き出されたのではないだろうか。前の結論のまま秦野部長にプレゼンテーションしたら、きっと良い反応は得られなかっただろう。おそらく経営企画部の吉田部長も同じはずだ。部長たちは、技術や情報システムの視点ではなく、経営の視点で課題をとらえているのだから、情報化の重要性は十分に理解しているものの、その前提となる根源的な課題への認識がわれわれよりも強いに違いない」。
4人は、川口が自分たちの出した結論に同意してくれたことに胸をなでおろすような気持ちだった。すでに休憩も取らずに2時間あまり討議してきて、脳が悲鳴を上げそうだったが、易々と手を緩めようとしない川口は「さて、最後にもうひと頑張りしようじゃないか。選別した6つの施策に対してグループ化と抽象化を行って提言にまとめよう」と促した。
4人は一斉に「ふぅ」と息をもらしたが、ここまできたらゴールはもう目の前だ。宮下と阿部が「これは経営者関連、これはユーザー部門関連……」といった具合に手際よくカードを分類し、抽象化とネーミングのセンスの良い奥山がそれぞれのグループにタイトルをつけて、ついに3つの提言をまとめた(図2)。
「これでプレゼンテーションの元ネタがすべてそろった。次回は、これらにシナリオをつけて、プレゼンテーションを仕上げようじゃないか」と、川口が晴れやかな表情で告げた。4人にとって今日の検討は、盛りだくさんで長く感じられた。しかし、終わってみると脳の疲れとは裏腹に、爽快感に満ちあふれていた。
著者プロフィール
内山悟志(うちやま さとし)
株式会社アイ・ティ・アール(ITR) 代表取締役/プリンシパル・アナリスト
大手外資系企業の情報システム部門、データクエスト・ジャパン株式会社のシニア・アナリストを経て、1994年、情報技術研究所(現ITR)を設立し代表取締役に就任。ガートナーグループ・ジャパン・リサーチ・センター代表を兼務する。現在は、IT戦略、IT投資、IT組織運営などの分野を専門とするアナリストとして活動。近著は「名前だけのITコンサルなんていらない」(翔泳社)、「日本版SOX法 IT統制実践法」(SRC)、そのほか寄稿記事、講演など多数。
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