高校野球女子マネジャーにも劣る経営者たち:生き残れない経営(3/3 ページ)
『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』が売れている。「もしドラ」と略すらしい。表紙が「萌え系」で年配者には抵抗感があるが、こっそり読んでいる経営者が出ているだろう。
そして次に、マーケティングだけでは企業として成功はない、第2の機能、イノベーション、すなわち新しい満足を生み出すこと、の教えをみなみは実行に移す。
何を捨てるか。退屈な野球の原因である「送りバンド」と「ボール球を打たせる投球術」を捨てることとする。そして、高校野球界に新しい変化をもたらそうとする。
大企業の某エレクトロニクスメーカーのA事業部長は、ある日定例の社長への業務報告会から帰ると部下のBを呼んで、小型記憶装置のC製品について勢いよく言い渡した。
A 「Cは、もう止める。生産を止めて、お客にも納入ストップする」
B 「えっ? どうしてですか?」
A 「赤字製品は撤退しろと、社長に言われた」
B 「もう少し受注が増えれば何とかなるし、今試作中の原価低減品が立ち上がれば赤字も何とかなります」
A 「いや、急ぐんだ。社長の厳命だ」
B 「じゃあ、Cに掛かっている設計や営業などの人、経費はどうするんですか。赤字は益々大きくなりますよ」。
Bを説得できないと思ったAは、Bの部下を口説き始めた。これは信じられないだろうが、某大企業の取締役事業部長の、捨てる戦略もなければ、次の事業の柱を立てる計画も持たない、みなみにも劣る情けない話である。
みなみは、社会に貢献することも実行に移す。校内の他のクラブへクラブ活動活性化のノウハウを伝授したり、地域の子供野球に貢献したりする。
こうして、みなみは次々とドラッカーの教えを実行する。途中で、ドラッカーが指摘する「成果より努力が重要である。(中略)かのごとき錯角」が頭をもたげ、甲子園を目指すという成果に疑問を持ち、「努力したからいい、努力に意味がある」という意見が出てくるが、みなみは成果に向けて、敢然と立ち向かう。
以上に挙げた経営の実例は、極端な例かも知れない。しかし、実態を表してはいる。世の経営者よ、「もしドラ」を読んでみようではないか。いや、P. F. ドラッカーの『マネジメント』そのものを「みなみ」のごとく熟読し、理解して実行に移してはどうだろう。
著者プロフィール
増岡直二郎(ますおか なおじろう)
日立製作所、八木アンテナ、八木システムエンジニアリングを経て現在、「nao IT研究所」代表。その間経営、事業企画、製造、情報システム、営業統括、保守などの部門を経験し、IT導入にも直接かかわってきた。執筆・講演・大学非常勤講師・企業指導などで活躍中。著書に「IT導入は企業を危うくする」(洋泉社)、「迫りくる受難時代を勝ち抜くSEの条件」(洋泉社)。
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