ドラッカーの言葉「企業の目的は顧客創造」を実践しない者は滅びる:生き残れない経営(3/3 ページ)
ドラッカーは、マネジメントとは企業の方向付けを行い、ミッションを決め、その上で目標を定めて「資源を動員し」、成果に責任を持つこととしたが、うまく実践できない企業も多い。
B社の中国西安敦煌ツアーに参加した時だ。敦煌に到着したホテルでの夕食時、男性添乗員が急に言い出した「疲れたので、明日の莫高窟の見学は省略します」。告げられたツアー参加者たちは狐につままれた表情をしたが、次の瞬間一女性客が猛然と食って掛かった、「何を言ってるの、わたしたちは疲れていませんよ。それに莫高窟を見るのがこのツアの主目的じゃないですか、何を考えてるんですか、絶対行きます!」。ツアー客全員がブーイングである。その剣幕に押された添乗員は、しぶしぶ言った、「じゃあ、行きます」。その添乗員は、成田空港からおかしかった。ツアー客の中の最年少の若者を手なずけて、使い走りなどをさせていた。終始顧客無視で、自己中心もはなはだしい。それにしても、メインの莫高窟観光中止という余りにも常軌を逸した言動について、筆者は未だに真意を計りかねている。
C社のオランダ・ベルギーツアーに参加した。旅行日程の初めごろ、妻がバスの棚に布製手提げを置き忘れた。女性添乗員に話したら、届けてもらうのに5万円掛かると言う。それほどの値打ちはないので断ると、じゃあ3万円と言う。届けてもらうのにタクシー代や人件費が掛かるからだ、と添乗員は言う。依頼すると、ツアー最終日の帰国便を待つアムステルダム空港に、中国系の大柄な女性が件の手提げを持って現れた。添乗員は、手提げを受け取りながら予め渡しておいた3万円を中国系女性に渡そうとする。しかし、彼女は受け取りを拒否する。2人の間で多少のやり取りがあったが、あくまでも受け取りを拒否し続ける中国系女性に、結局添乗員は強引に3万円を渡した。わたしたちには、割り切れないものが残った。
D社の国内温泉バスツアー2泊3日コースに参加した。往きの昼食は自由、添乗員は「食堂の一般席は混みますから、予約した方がいいです」と薦めるので、ほとんどの参加者が「1500円の昼食は重いんだけど・・・・・・」と言いながら、予約を入れた。結局、一般食堂はガラガラだった。3日目の帰途、バスの中で添乗員はまたまた言い出した、「帰りは遅くなるので、夕食の弁当を注文された方がいいです。ドライブインでは弁当を買う時間はありません」。何人かが予約を入れた。予約弁当を積み込んだドライブインでは、何のことはない、各自弁当を買う時間は十分にあった。弁当を予約しなかった客たちは、好みの食事を購入できた。しかも、バスの中で予約した豚肉舞茸弁当は味が濃すぎて、健康にいかにも良くなさそうだった。旅行会社は、儲けることしか考えていないのだろう。
これらは、ほんの一部の例に過ぎない。これほど顧客無視の例が多いと、利益追求中心主義が旅行会社の体質だとしか考えられない。客が新興国になったら、どうなることやら。
ドラッカーの「企業の目的は顧客創造である」を実践する企業は生き残り、かつ発展するが、実践できない企業はそう遠くない将来淘汰される運命をたどるだろう。
著者プロフィール
増岡直二郎(ますおか なおじろう)
日立製作所、八木アンテナ、八木システムエンジニアリングを経て現在、「nao IT研究所」代表。その間経営、事業企画、製造、情報システム、営業統括、保守などの部門を経験し、IT導入にも直接かかわってきた。執筆・講演・大学非常勤講師・企業指導などで活躍中。著書に「IT導入は企業を危うくする」(洋泉社)、「迫りくる受難時代を勝ち抜くSEの条件」(洋泉社)。
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