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進まぬ変革、いら立つ経営者、結局は陣頭指揮しかないのか戦略コンサルタントの視点(3/3 ページ)

「想いと現場の取り組みが一体化していない」という問題に直面する経営者にとっての解決方法として「経営者の分身をいかに創り出すか」という考え方が挙げられます。

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さらに経営者の分身として

 EIOには、経営者に代わってプロジェクトに深く入り込み、現場を動かすことも求められます。

 問題のある現場に出て行き、積極的に「議論を誘導」「検討のヌケモレの指摘」「方向性の誤りを指摘、軌道修正」などを通して、現場での改革推進を担保します。

 これは委託先のコンサルティング会社やベンダーが担当しているプロジェクトでも例外ではありません。委託先の責任範囲であっても経営者の問題と捉え、正面から切り込んでいき、問題を解決します。

ケース:他のコンサルティング会社への監査実施

 大手企業Cが米国系大手総合コンサルティング会社D社に委託したシステム要件定義プロジェクトは、開始3カ月後から遅延し始め、プロジェクトマネジャーの交代をしてもなかなか改善の兆しが見えてこない状況でした。開始半年が過ぎ、品質面での劣化の問題も顕在化してきたため、EIOは担当取締役に対してD社の監査を提案、実施することとなりました。

 まず、D社のプロジェクトマネジャーをはじめ、30人以上のコンサルタントやエンジニアにヒアリングを実施し、スキル面での不備や、D社内での作業指示や課題共有などのコミュニケーション面での問題点を特定していきました。

 さらに、D社の社長や営業幹部へもヒアリングを行い、D社の本社側では、C社内でのプロジェクトの状況、担当取締役の不満が全く察知されていなかったという「社内報告」における問題も検証されました。

 EIOは担当取締役とD社社長の月次面談などを含む改善策を策定し実施させました。さらに、EIOがその後半の年程度、D社のプロジェクトの集中管理をすることで、プロジェクトの問題を解消し、正常運営へと戻すことに成功しました。

PMO(Program Management Office)に対する問題意識

 大規模プロジェクトや、多数のプロジェクト群のマネジメントにおける定番手法として、PMOが存在します。実際、多くのシステムベンダーやITコンサルティング企業、そしてプロジェクト・マネジメント専業のコンサルティング会社がPMOサービスを提供しています。

 しかし、ほとんどの場合が経営者の焦りや苛立ちの解消には役立っていないのが実態です。この問題意識が我々がEIOを生み出した出発点になっています。

 次回はPMOとEIOの比較を中心に検討していくことで、現在定番とされているプロジェクト・マネジメント手法が抱える根本的な課題などについて考えていくことにします。

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著者プロフィール:大野 隆司(おおの りゅうじ) 株式会社ローランド・ベルガー パートナー

大野 隆司

早稲田大学政治経済学部卒業後、米国系戦略コンサルティングファーム、米国系総合コンサルティング・ファーム、米国系ITコンサルティング・ファームを経て現職。電機、建設機械、化学、総合商社、銀行など幅広い業界の大手企業において、事業戦略、オペレーション戦略、IT戦略の策定などを手掛ける。


著者プロフィール:大久保 達真(おおくぼ たつま) 株式会社ローランド・ベルガー プロジェクト マネージャー

大久保 達真

慶応義塾大学理工学研究科修了後、三菱マテリアル、ネットワンシステムズを経て現職。米国コロンビア大学MBA。情報通信業、電機、自動車、金融、航空業界など幅広い業界における、事業戦略、新規事業立案、組織・人材戦略、マーケティング戦略、IT戦略の立案とともに、大規模PMOの運営などの実行支援も手がけている。システムアナリスト、システム監査技術者の資格を保有する。


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