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ドラッカーの真意と夢にまでうなされたプロフィットセンターの実態生き残れない経営(3/3 ページ)

ドラッカーは難解だ。例えば、ドラッカー理論の最も基本的な部分「企業の目的は顧客創造である」に関わるテーマであるが、筆者が若い頃から嫌というほど経験し、泣かされてきた。

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 こう分析してくると、単なる「コストセンター」を「プロフィットセンター」と誤解することによる弊害と、経営の誤りは、間違いなくあった。   

 しかし、ドラッカーが「プロフィットは外からしかやってこない。顧客が注文をくれ、支払いの小切手が不渡りにならなかったとき、ようやくプロフィットセンターを持てたということになる」と主張するが、企業が懐手をしていて顧客が注文をくれるわけでないし、不渡りのない支払いをしてくれるわけでもない。企業が積極的に顧客を創り出し、顧客満足を提供することによって支払いを受け、プロフィットを得ることができる。

 外部の顧客はプロフィットの源だが、単なる源にすぎず、自動的にプロフィットセンターになるものではない。その源をコントロールしてプロフィットを実現するのは社内にあるセンターでなければならない。ドラッカーを字面から解釈せず、意訳せよという意味はここにある。

 営業部門は社内において、プロフィットの源である顧客に一番近いところにあって、企業目的である顧客創造のために、そしてその機能であるマーケッティングとイノベーションを十分発揮できる尖兵としてある。すなわち、営業部門はプロフィットセンターの役を十分担える立場にある。この営業部門に充分な責任と同時に権限を与えることによって、営業部門はプロフィットセンターたり得る。

 その責任と権限は、あたかも筆者がA事業所製造部門で担ったように、絶対的に与えられなければならない。例えば、マーケッティング実施の権限、設計に対してイノベーションを指示する権限、製品価格設定の社内に対する権限、顧客信用度調査の権限等などの顧客創造に関する一切の権限が与えられ、もちろんそれらに伴う厳しい責任も負う。

 そして、確かに企業の目的がプロフィットではないが、顧客創造という成果を判断する基準であるというプロフィットの一定義を立証する責任も負う。

 こう考えてくると、A事業所を抱える某大企業が間違えているごとく、いずれの企業も、自社が従来から認識している「プロフィットセンター」の間違いに気づき、正しい認識を持つことによって、ドラッカーの理論を実践することができる。

著者プロフィール

増岡直二郎(ますおか なおじろう)

日立製作所、八木アンテナ、八木システムエンジニアリングを経て現在、「nao IT研究所」代表。その間経営、事業企画、製造、情報システム、営業統括、保守などの部門を経験し、IT導入にも直接かかわってきた。執筆・講演・大学非常勤講師・企業指導などで活躍中。著書に「IT導入は企業を危うくする」(洋泉社)、「迫りくる受難時代を勝ち抜くSEの条件」(洋泉社)。



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