リーダーシップは厳密に定義される――GEが実践するグローバル展開の必須項目:スマートな経営のためのラウンドテーブル(2/2 ページ)
『スマートな経営のためのラウンドテーブル』の第2回で講演を行ったのは、GEキャピタルジャパンでCIOを務め、長年にわたって同社の経営陣の一員と活躍してきた松本良之氏だ。
1.外部志向
2.明確でわかりやすい思考
3.想像力
4.包容力
5.専門性
Growth Valuesは人事評価でも利用されている。Growth Valuesと業績の2つの軸で構成されるマトリックスで、全従業員が評価されるのである。
ただし、Growth Valuesは固定しているわけではない。時代が変われば求められるバリューも変わらなければならないという思想のもとに見直しが行われる。世界で最も成功している企業・個人を徹底的に調査し、共通する資質をふるいにかけてバリューを抽出する作業が行われているのである。
さらにGEでは、経営者だけでなく、現場のマネージャ、一般の従業員にもリーダーシップが求められるという。これにより「私は下の人間なので」という言い訳を絶対に許さない文化が作られるのだ。
その一方で、リーダーを養成するプログラムも充実している。財務部門や営業・マーケティング部門、IT部門などの部門ごとにリーダー育成プログラムが用意され、社外/社内から毎年50〜100名の参加者があるという。
講演の最後では、ジェフリー・イメルト会長が「一週間の時間の使い方を教えてほしい」というビジネススクールの学生からの質問に対し「70%はリーダーシップの育成に使っている」と答えたというエピソードを紹介。「リーダーはトップ自らが時間を使って育てなければなりません」(松本氏)と語って、講演を締めくくった。
白熱した質疑応答〜日本的な建前と本音はグローバル化の最大の障壁
ラウンドテーブル後半の質疑応答では、活発な意見交換が行われた。講演で説明されたリーダー育成プログラムの実施方法に関する質問、人事評価のあり方、あるいはGEが考えるGrowth Valuesの定義方法などに関する質問に対し、松本氏が回答あるいは参加者と議論を展開する時間となった。
例えば、Growth Valuesについて、参加者の1人から「日本では創業者の言葉や考え方が、企業にとっての不変の価値として受け継がれることが多いが、GEではそういうことはないのか」という質問が出た。
これに対して、松本氏は「GEでは文書に書かれているもの以外は存在しない」として、明文化されていない価値をはっきりと否定。さらに、別の質問者からの「そうはいっても、建前と本音があるのではないか」という質問に対しては「日本的な建前と本音は、グローバル化の最大の障壁」と答えるなど、日米の文化的な違いにまで踏み込んだ議論が展開され、グローバル化を目指す日本企業にとっては、非常に刺激的かつ有意義な時間となった。
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