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“社名”と“タイトル”が意味することヘッドハンターの視点(2/2 ページ)

地位には権限(と、忘れちゃいけない“責任”)はついてきますが、信頼や尊敬は血の通った“人”にしかついてこないのです。

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 ところがCさんは「有名なグローバルコンサルティングファームで活躍している人を採用したいので彼は違うと思うから会わない」と言ってきました。わたしは「あなたは何のために高いフィーを払ってわたしを雇っているの? もしあなたがBさんに会って、あなたの言うことが正しかったとしてもあなたの失うものはたったの1時間です。でも、あなたの言うことが間違っていてここで会うことすらしなかったらどれほど御社の損失になると思いますか?」と食い下がりました。

 Cさんは「そこまで言うなら仕方ない。お会いしましょう。でも1時間しか時間はとらないよ」と言いました。この時点ではCさんはわたしの言うことに納得したというよりも、小生意気なヘッドハンター(=わたし)を黙らせるのに1時間以上かかると思ったのかもしれません。理由はどうあれBさんに会ってくれさえすれば、彼の優秀さは理解してもらえるとわたしは確信していました。

 数日後インタビューが実施されました。インタビュー終了直後Cさんから電話がかかってきました。開口一番「ぜひBさんを採用したい。次はどうすればいい?」この言葉を聞いた瞬間、電話を持ったまま大きくガッツポーズをしたのは言うまでもありません。その後、引き止めなどいろいろありましたが、BさんはA社に転職されました。

 半年後、Cさんに「Bさんはいかがですか?」と伺うと「期待以上に大活躍してくれている。あの時僕をプッシュしてくれてありがとう」と涙が出るほどうれしい言葉をいただきました。Cさんにとって小生意気なヘッドハンターはプロフェッショナルヘッドハンターに昇格し、その後たくさんのビジネスを紹介してくれました。

 「社名」や「タイトル」だけで採用を決められるのであれば、既に一部でその動きがあるように、ヘッドハンターの仕事はソーシャルメディアに置き換えることさえできます。確かに「社名」や「タイトル」はその人の一部ではありますが、直接お会いしてみないと分からないことはまだまだたくさんあります。

 ある時大手コンサルティングファーム(D社)のパートナー(Eさん)は「俺が転職すれば部下が最低50人はついてくる」と言って直接ご自分を数社に売り込んでいました。コンサルティング事業を拡大していた日系IT企業(F社)は、高額の報酬を提示してEさんを採用しました。ところが1カ月、3カ月、半年たってもD社からは誰も採用できませんでした。

 Eさんはうそをついたのでしょうか? わたしはそうは思いません。この事実に最も驚いたのはEさんだったと思います。よくあることですが、Eさんはご自分の地位を自分自身と勘違いしてしまったのだと思います。「社名」や「タイトル」は本人がそれを超えない限り、周りの多くの人はその人の持つ「地位」と仕事をしている(頭を下げている)のです。

 地位には権限(と、忘れちゃいけない“責任”)はついてきますが、信頼や尊敬は血の通った“人”にしかついてこないのです。

著者プロフィール

岩本香織(いわもと かおり)

G&S Global Advisors Inc. 副社長

USの大学卒業後、アンダーセンコンサルティング(現:アクセンチュア)入社。東京事務所初の女性マネージャー。米国ならびにフィリピンでの駐在を含む8年間に、大手日系・外資系企業のビジネス/ITコンサルティングプロジェクトを担当。 1994年コーン・フェリー(KFI)入社、1998年外資系ソフトウェアベンダーを経て、1999年KFI復帰、テクノロジーチーム日本代表。2002年〜2006年テクノロジーチームAsia/Pacific代表兼務。2010年8月KFI退職。2010年9月より現職。


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