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「プラットフォームの整備は今からでも遅くない」――ネットイヤーグループ、石黒氏ITmedia エグゼクティブセミナーリポート(2/2 ページ)

日本企業が再び活力を取り戻すためには何が必要なのか。ネットイヤーグループの石黒氏によると、そこで求められているのが、企業と消費者とをダイレクトに結ぶプラットフォームなのだという。では、その整備をいかに進めればよいのか?

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自社のWebメディアで自らメッセージを発せよ

 「プラットフォームはマーケティングの集合体」と石黒氏。その整備にあたっての第一歩となるのが、消費者との双方向の対話を可能にする自社のWebメディアの整備である。

 「これほど嗜好が多様化したことで、ターゲットユーザーの個々の嗜好に合致したメッセージを伝える必要性が高まっている。また、良好な関係を長期にわたって保てれば、場合によっては消費者からサポートを受けられることもあるだろう。その実現にあたっては、自らメッセージを発せられる自社のWebメディアを欠かすことができない。業務の中核に自社媒体を据えるとともに、SNSと融合を図りつつ時間をかけて媒体を育成する必要があるのだ」(石黒氏)

 Webメディアのメリットは消費者の行動を可視化できること。いつ、どこから訪れ、サイト内をどれほど時間をかけ回遊して去ったのか。これらのデータを踏まえて仮説や目標を設定し、効果測定を行いサイトの改善や次なる目標設定につなげるというPDCAサイクルを回すことで、自社メディアと業務の双方の高度化を推し進めることができる。

 そのためにまず取り組むべきこととして石黒氏が挙げるのが、自社の資産の見直しを通じたコア・コンピタンスの洗い出しである。

 例えばAmazon.comは創業当初、インターネットを販路としつつも、昔からある“本屋”だった。では、なぜ成功できたかといえば、インターネットにいち早く着目し、消費者が店舗に足を運ぶことなく本を購入できるという利便性を提供できたからと捉えられがちだ。

 だが、石黒氏はこの見解を否定する。

「同様の販売形態は他社でも可能であったにも関わらず、同社に匹敵する企業は誕生しなかった。これは、同社の強みの本質が、利用者の購買の決断を支援するレコメンドやレビューなどの機能を実装した情報プラットフォームにあったからこそ。単なるECとはまったく異なっていたのだ」

 利用者の購買を支援できるというコア・コンピタンスを実現した高機能なプラットフォームを武器に、同社はアフィリエイトによってソーシャルメディアを積極的に活用し、販路を大幅に拡大することにも成功した。外部企業にも門戸を広げ、販売マージンという新たな収益源も確保した。一度でも同社を利用した消費者には、消費者が関心を示すと推測される商品に関するメールを定期的に配信することで、消費者の消費意欲を絶えず刺激し続けている。

SNSは長い目での消費者教育に用いるべし

 一方で、Amazon.comは株式を上場後、社債を発行してまで物流倉庫を整備したという。その狙いは受注した商品をいち早く消費者に配送するための物流システムを整備することにあった。今では朝7時までに注文した商品は、早ければ当日中に配送されるほど。消費者に支持され続けるためには「ネットとリアルの世界を結ぶ仕組み作りが不可欠」(石黒氏)なわけだ。

 「これからプラットフォーム作りに取り掛かる企業は、ニュースレターや配送センターにおけるアマゾンの取り組みをまず真似てはどうだろうか。そして、マッシュアップによってプラットフォームを成長させる。この手法であれば、一度に多額の投資を行わなくても済むはず」(石黒氏)

 さて、ここにきてSNSの利用者は急伸し、米国では全PVの約25%がフェースブックによるものとの調査もある。このことに対する戸惑いから、対応策について石黒氏に多くの問い合わせが寄せられているという。この点について石黒氏は次のよう提言し講演を締めくくった。

 「SNSでの友人のレコメンデーションは、確かに消費者の興味を惹くだろう。ただし、従来からの検索をベースにした消費が、すべてフェースブックに置き換わるとは冷静に考えれば考えにくい。ただし、SNSでの会話には企業にとって重要なヒントが隠されていることも事実。そこで、企業は新たな気づきを得るとともに、そこでのコミュニケーションを通じて消費者をいわば時間をかけて育てるためにSNSを活用すべきなのだ」

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