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シンクライアント技術でiPadセキュリティを強固に 内田洋行iPadで躍動する職場(2/2 ページ)

オフィス家具の販売やシステムインテグレーションを手掛ける内田洋行は、社内業務改善の効果を期待して数十台のiPadを採用した。導入にあたり、セキュリティなどシステム運用面への配慮が不可欠だったという。

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シンクライアント化でセキュリティにも配慮

釜谷誠氏
釜谷誠氏

 iPadをはじめとするモバイルデバイスの企業展開にあたっては、セキュリティが大きな課題として挙げられる。例えば、外出先で紛失した場合にそこからデータが漏えいしてしまうなど、さまざまなリスクをはらんでいるからだ。

 このことを踏まえ、内田洋行がiPadの導入を機に新たに採用したのがシンクライアント技術である。具体的には、VMwareとCitrix XenDesktopを組み合わせることによって、iPadの台数だけ仮想OSを作成した。社外から社内ネットワークへのリモートアクセス時には、社内PCのデスクトップをiPadに配信することで、iPadをシンクライアント化したのである。

 同課の釜谷誠氏は、「モバイルデバイスを社外に持ち出す際の対策としてデータの暗号化なども検討したが、専用ソフトウェアのインストールが必要など、それぞれに一長一短があった。しかし、iPadをシンクライアント化すれば、そもそもデータがiPad内に残らず、情報漏えいリスクを抜本的に払拭できると考えた」とシンクライアントのメリットを説明する。

 また、リモートアクセス時のなりすましによる不正アクセスを防止するため、サイバネットシステムの「PhoneFactor」を採用して本人認証の強化を図った。同サービスは外部から社内ネットワークへの接続を要求すると、事前に登録されたユーザーの携帯電話に電話がかかり、音声の指示に従ってキー操作を行うと接続が許可されるというものである。

「(iPadの)iOSではVPNを利用できるものの、社内ネットワークにアクセスするためには、より強固な認証の仕組みが必要だ。そこで、iPadと携帯電話を一度に紛失する可能性が低いことを踏まえ、2経路認証の仕組みを採用することにした」(釜谷氏)

 iPadの導入効果は、業務に遅れが生じる事態が大幅に減少するなど、業務効率の改善という形で確実に表れている。当初は本当に利用が進むか不安な面があったものの、ふたを開けてみれば、関連書籍を購入して自ら情報収集する管理職も少なくなく、総じて利用に前向きだという。

 そのため、「iPadの配布にあたって特別な教育を行わなかったものの、問い合わせはほとんど寄せられていない。社内で無線LAN環境を整備したことも利用を後押しした」と竹下氏は強調する。PCに慣れた人にはソフトウェアキーボードは使いにくいと見られていたが、その操作にもすぐに慣れたようだ。

システム構成図
システム構成図

導入ノウハウをキッティングや運用管理サービスに反映

 iPadの今後の利用拡大に向け、同社が課題の1つととらえているのがやはりセキュリティだ。既に述べたような対策を講じてはいるものの、アプリケーションのインストール制限などは現在行われていない。これによって社員の利用意識が削がれかねないとの判断に基づくものだが、「より多くの人が利用するとなれば、セキュリティポリシーを踏まえた何らかの対策が必須となる」と竹下氏は指摘する。

 加えて、「常日頃からモバイルデバイスを持ち歩くとなれば、労務上の問題に配慮を払う必要がある」と竹下氏。iPadは、メールチェックなどであればいつでも仕事ができる環境を提供する。一方で、常時携帯させていることで社員を長時間拘束しているという意見もある。この点を踏まえ、労務管理の観点から社員を正当に扱っていることを証明する仕組みの整備も欠かせないという。

 さらに、iPadの端末台数が増えるほど、運用管理負荷も高まらざるを得ない。そこで、同社が今後、利用を予定しているのがモバイルデバイス用の運用管理ツールである。今回の社内展開ではすべて手作業でiPadの設定を行ったが、運用管理ツールを利用すれば、アプリケーションの配布や制限を容易に行うことが可能だ。

 そのメリットを享受すべく現在、ソフトバンクテレコムのASP型MDM(Mobile Device Management)サービス「ビジネスコンシェル」と、ソフトバンクBBのMDMソリューション「Mobile Iron」の評価を行っており、特に後者については外販にまでつなげる計画だ。

「iPadの展開や管理のやり方は、実機を使ってみなければ把握できず、この点が導入のネックになっている企業は少なくない。そこで、キッティング(ハードウェアを実際に使用できる環境まで組み上げる作業)やMDMなどサービスの側面からニーズの開拓につなげたい」(竹下氏)

 現在、同社ではiPad用コンテンツとして、製品パンフレットの拡充に力を入れており、「営業活動を行う上でも、これらのコンテンツは強力な武器になるはず」(釜谷氏)と大きな期待を寄せている。

 他部署でもiPadの利用が相次いでおり、既に100台ほどが業務で利用されている。ただし、業務内容によって、ノートPCとiPad、iPhoneのいずれを利用すべきかは異なるはずであるため、今後、数カ月かけて部署ごとに最適な端末を見極め、それらの展開を推し進める計画だという。併せて、同社事業の柱の1つである教育分野をiPadの有望市場と位置付け、新たなソリューションの開発に注力する考えだ。

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