「子供が親の思う通りに育つとは限らない。会社も同じ。今後を作り上げるのはスタッフと顧客」――ライフネット生命保険株式会社 出口治明社長:トークライブ“経営者の条件”(3/3 ページ)
外交員を持たないネット生保として2008年に開業、スタートした、戦後初の独立系生保ベンチャー、ライフネット生命保険株式会社。同社を立ち上げ、経営するのは還暦の社長、出口治明氏だ。長年の大手生保勤務経験を通じ、独自の歴史観で培ってきた考えを、「宝くじに当たったような」機会から現実のものにしたという。
「何かを変えたいという気持ち」がリーダーにとって最も重要
本と旅が趣味という出口氏は、その読書や旅行で培った、独特の歴史観・人間観を持っている。
「30代前半、ヘンリー・キッシンジャー氏と仕事上の縁で話をする機会があった。『人間はワインと一緒で気候の産物、そして先祖のことは立派であってほしいと考えているものだ』と語っていた。地理と歴史が大切だということだ。その言葉を受けて、『キッシンジャーが言っていた』と、大手を振って世界中を旅して回っていた(笑)」(出口氏)
この豊富な旅行体験と読書量が、「歴史オタク」を自称する出口氏を作り上げた。「キャリアパスについてどう考えているか」との会場からの質問には、こう答えている。
「チャレンジすることは尊いが、大事なのはまず健康、そしてインプットの量だと思う。キャリアパスを云々する前に、縦横の繋がりを勉強することが重要だ。本を読んで昔の人の知恵を借りればいい、これが縦。そして世界の人の話を聞けばいい。これが横。人間は愚かな動物であり、二度も世界大戦をしたのに、まだ世界のどこかで戦争をしている。でも滅びない。トータルでいえば失敗から学んできているから。挑戦する上では、世の中の動きがある程度読めることが前提。風が吹かない時に凧は上がらないのだから。成功した人のほとんどは、偶然の要素が考える以上に強い」(出口氏)
そして最後に、リーダーシップについて、次のように語った。
「スーパーマンのようなリーダーがいて組織が成功するのでは必ずしもなく、むしろいろいろな人たちが補い合って、組織全体のポートフォリオで成功するものだ。リーダーシップは『指輪物語』に学ぶのが一番。主人公フロドの行動に、リーダーについての全てがある。彼は大した力もない小人だが、ほとんど不可能と思われていたような偉業を達成する。それは、皆が助けてくれたから。まず『何かを変えたい』という強い気持ち、思いが最も重要、次に、一人ではできないので旅の仲間を集める『共感力』、そして最後まで旅を続ける『統率力』。成し遂げたい『思い』がない人は、結局何もできない」(出口氏)
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