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ワークライフバランスは人生にも企業にも、そして社会にも好循環を作り出すITmedia エグゼクティブセミナーリポート(3/3 ページ)

景気低迷で職場崩壊が進む中、先の震災もあり、多くの企業で働き方の多様性、ワークスタイルの変革によって職場の活力を取り戻さなければならないと痛感しているはずである。経営戦略として捉える重要性と、取り組み方をワーク・ライフバランスの小室淑恵社長が語った。

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「誰もが何らかの制約を受ける可能性がある」を前提に

 こういったさまざまな要因を考えると、今後は誰もが「フルタイムで働けるとは限らない」状況に陥る可能性がある。企業も、そうした人員を大量に抱えつつ、利益を上げていく必要がある。むしろ、その状況を前提とした労働環境に対応することが望ましいと小室氏は言う。

 「10年後には、仕事に何らかの制約を持った人が8割にもなるだろう。今のままの仕事内容や評価方法であれば、その人たちは評価されずモチベーション低下、残る2割の人には仕事が集中して過労死寸前といった状態になってしまう。育児中の女性という限られた一部の社員のためでなく、男性を含めた全社員の働き方の変革が必要」(小室氏)

 もともと、ワーク・ライフバランスは、働く意欲や能力のある女性が出産・育児で退職した後、職場復帰するのを支援するといった目的で提案されてきた過去がある。その点は非常に重要だ。出産・育児を終えた女性が安心して働ける環境を整えることで、短期的にも大きな効果が期待できる。

 「教育の水準が高く女性の活用度が低いということは、それだけ潜在的な労働力があり、労働力人口を拡大する余地があるということでもある」(小室氏)

 そして近年では、そういった女性の人材活用というだけでなく、自身の長期加療生活や親の介護といった課題をふまえ、男性にもワーク・ライフバランスが深く関係するという認識が広まってきた。育児にも、夫婦が共同で取り組むことが望ましい。

 「ワーク・ライフバランスを考える上では、女性だけでなく男性にも、長時間働きすぎないようにする対策が必要だ。実際、他の先進国では以前から男女ともに労働時間を規制しており、結果として労働生産性が高まり、家計が安定し、子供が増えるという成果をもたらしている。母親としては、夫が早く帰ってきて育児を手伝ってくれる、というのが重要」(小室氏)

 さまざまな個人的事情や時間的制約によりフルタイムで働けない人を基準とした働き方を全社共通ルールとすると、逆に制約がなくフルタイムで働くことが可能な人にもメリットがある。時間の余裕を使って勉強をしたり、見聞を広めたり、人脈を広げたりといった機会を増やせる。もちろん趣味に打ち込んでもいいだろう。いずれにせよ、自分の人生を豊かにするものだ。もちろん、効率的な時間の使い方を覚えておけば、いざ自分がそうなったときに役立つ。

 「ワーク・ライフバランスとは、ワークとライフとで時間を取り合う関係ではない。むしろシナジー、好循環を目指すもの。ただし、企業はそれぞれ固有の環境があり、ワーク・ライフバランスを改善する手法も違ってくる。100社あれば100通りの方法があると言っていいくらいです。「ウチではダメ」と、思考停止に陥らないで、しっかり分析して働き方を見直してほしい」(小室氏)

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