【第3回】既存組織の中にチームをどのように作るか:チームワーク 2.0(1/2 ページ)
最大の効果を得るためには集団によるマイナス面を補うチームマネジメントスキルを修得する必要がある。今回はその前提としてチームというものの定義を詳しく見ていく。
連載第1回では、職能組織を横断するチームで仕事を進める新しい形である「チームワーク2.0」と、その効果を紹介しました。第2回では、人が集団で行動するとき、パフォーマンスを下げる作用があることを述べました。
チームワーク2.0から最大の効果を得るためには、集団によるマイナス面をリカバーするためのチームマネジメントスキルを修得する必要があります。今回は、その第1ステップとして、チームというものの定義を、もう少し詳しく見てみることにしましょう。
チームを定義する
集団、グループ、チームなど、複数の人が集まった状態を表現する言葉はいくつかあります。また、会社の中には、職能組織の部門名に、○○チームとついているところもあるでしょう。一方、チームワークの研究では、もう少し厳密にチームの定義をしています。その表現には少し違いはありますが、だいたい共通的な定義があります。ここでは、組織心理学研究で著名な、英国アストン・ビジネススクールのウェスト教授による定義を見てみましょう。それによると、チームとは、次のような条件を持つ2人以上の集まりだとしています。
目標: チームの目標と期限がある
役割と相互関係: メンバーにはそれぞれ専門性に沿った役割があり、メンバーの仕事は相互関係がある
対等: メンバーには上下関係がない
自治: チームは自己管理の裁量がある
さらに、チームのサイズは、現実的には15人以下、理想的には6〜8人以下だとしています。典型的な例では、新製品を開発するために各部門からメンバーを集めたチーム、受注した仕事を完成させるプロジェクトチーム、システム開発プロジェクトやプラント開発プロジェクトなどが挙げられます。また、目的を達成する期限がもっと短いチームもあります。旅客機のパイロット、副操縦士、客室乗務員からなるフライトチームは、数時間でその目的を達成し、解散します。患者の手術を行うための数時間、さまざまな医療専門家によって編成される手術チームも同様です。
このようなチームと、伝統的な職能組織や小集団チームとの最も大きな違いは、多様性と自律性にあります。まず多様性について、異なる専門性やバックグラウンドを持つメンバーから構成されるチームは、時として価値観の違いが衝突し、いわゆる「チームがまとまらない」状況を生みます。しかし、この衝突はチームワーク2.0から得られる重要なメリットの1つ、「イノベーションや画期的な刷新」につながります。
自律性に関して、チームにはかなり大きな裁量が与えられます。チームが目的を達成する上で必要な意思決定を、いちいち組織の管理者や経営者に決裁してもらうのではなく、チームの中でできるようにすることで、仕事は効率的になり、チームのパフォーマンスは上がります。極端な例ですが、手術チームのメンバーの一人である看護師が、手術中に、いちいち看護師長に承認を求めていたのでは、とても間に合いません。リーダーである執刀医の下で、自らの専門知識を駆使して、意思決定しています。
チームで仕事をする効果は?
さて、チームワーク2.0をさらに理解するために、職能組織との対比をしてみましょう。図1のように、職能組織での仕事は、組織の機能の上層を順番に(時には並行して)進んでいき、最終的に成果物が生み出されます。また、大きな経営資源を使うような意思決定の場合には、組織階層の上方にコントロールが向かいます。いわゆる「決裁」ということですね。これに対して、チームは特定の目的を達成するために、異なる専門性を持ったメンバーが近くにいて、相互に関係しながら仕事をします。また、日本でよく作られる現場の小集団チームは、職能組織の階層の下に作られ、一般的には、特定の専門性を持った人たちだけで仕事をします。
チームによる仕事のやり方は、職能組織に比べて次のような効果があります。
1. 業務の効率化・高品質化
それぞれの役割と専門性をもつメンバーが、一緒になって仕事をするため、問題解決や改善が迅速にできる。
2. イノベーションや画期的な刷新
異なった価値観の人が見ると、今まで気づかなかった大胆な発想、画期的な刷新が起こりやすく、実現しやすくなる。
3. 変化への対応
職能組織のような上位階層に決裁を仰ぐ必要がない。フラットな組織であるためその場で対応の決定ができる。
4. メンバーの成長
仕事を全体としてとらえて学習する機会が増える。ほかの専門家の仕事を見る機会を通じて学べる。
5. モチベーション
チームの仕事全体の成果がつかみやすく、自分の仕事の結果や貢献に対するフィードバックになる。
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