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“世界最小”出生の秘密グローバルへの道 SONY成長の軌跡(2/2 ページ)

日本にはお金も市場も資源もなかった。資金と市場は海外に求めた。少ない資源で同機能の商品開発のために半導体を開発、改良。そこから小さくて消費エネルギーが少ない“世界最小”が次々生まれた。

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得意分野で勝負する

 もうひとつの条件があります。どんなものを造るべきか。日本には資源がない。より少ない資源で同じことができるような商品を開発しなければ、日本のおかれた状況に適合しない。そのためには、一つ一つの商品はあくまで小さくなくてはならない。また、消費エネルギーが少なくなくてはならない。かくしてソニーは、半導体を開発、改良しそれを使って、世界最初のポケットに入るラジオを始めとして、世界最小型のテレビ、録音機、VTR、ビデオカメラ、などを次々に世に出し成功を収めることになります。

 グローバリゼーションの基本は、お金のある市場を狙う。自分に合った商品で勝負する、ということです。今、お金のある市場はどこでしょうか。一般の人々がたくさんお金を持っていて、それを使う市場は決してBRICsではないでしょう。ユニクロがニューヨーク5番街に出て行くのは正しい。今の日本に合った商品は何でしょうか。決して、大型のテレビや家電製品ではないことは明白です。自動車でもなくゲーム機でもないように思われます。

 日本経済を支える輸出製品は、その時の日本の特徴が生かせるもの。世界と競争して条件の良いものです。今、観光、サービスはれっきとした輸出商品です。ゲームを中心としたコンテンツも可能です。アニメ、ファッションもそうでしょう。高度の技術商品は、その先に大衆の市場があれば、可能性は大きい。素材、素子、部品など、技術の集積が必要なものであれば、世界で十分な競争力を持つことができます。

 サービスも技術も技能も、良ければ売れる商品です。それは一朝一夕に手に入れられるものではありません。常に努力を継続していけば、そのぶん改善され、蓄積されていきます。それを形にして、市場に出していけば良いわけです。

 時代は変わり、大量の資源、資材、エネルギーを必要とするようなサービスや商品は、日本は提供できなくなってきています。しかし、小さなもの、高性能のもので、生活に必要なものは、世界中でますます需要が多くなってくるはずです。そこに集中すれば、日本の将来は、まだまだ希望が持てます。

 今、お金のある市場を狙って、最も自分に合ったサービスと商品で競争を挑む。それがグローバリゼーションの基本です。あなたの会社の、あるいはあなた自身の狙いどころはどこですか。その具体的な話は、このシリーズの中で、逐次展開していきましょう。

 もちろん、盛田氏がグローバリゼーションを始めた直接の動機は、お金が欲しかったからではありません。日本を再建しなければならない。日本再建のためには、お金が必要だ。それはどこにあるか。米国だ。よし米国からとってこよう。武力では勝てないことが分かったから、商売で勝つ。武器でなくて、商品で戦う。それが戦争で負けた仕返しにもなる、というわけです。

 米国に対する盛田氏の思い入れは、むちゃくちゃ強い。愛と復讐は、自己犠牲を正当化するもっとも崇高な理念の表裏です。アメリカチームに勝って恩返しをした、なでしこの澤主将はアメリカチームでプレイをしていました。盛田海軍中尉は商売のため家族を引き連れて、アメリカに移住します。

 次回は、盛田氏のグローバリゼーション第一幕、アメリカからの現場取材報告です。ご期待ください。

著者プロフィール

郡山史郎

株式会社CEAFOM代表取締役社長

1935年鹿児島県生まれ。一橋大学経済学部卒。1959年ソニー入社

スイス、米国に市場開拓マネジャーとして通算12年滞在。米国大企業に転じて、日本代表、北アジア担当、複数の関連会社の社長を歴任。1981年にソニーに復帰し、取締役情報機器事業本部長、常務取締役経営戦略本部長、資材本部長、一般地域統括本部長など歴任。2004年株式会社CEAFOM創業。

国際大学、早稲田大学、一橋大学、九州大学など講義、講師多数。外国人記者クラブ、証券取引監視委員会など講演多数。著書、「ソニーが挑んだ復讐戦」。

ソニー創業者、井深大、盛田昭夫、大賀典雄の直属幹部として永年経営に参加し、社長賞4回の実績あり。現在、多くの企業に対し、経営全般、グローバリゼーション、事業企画などのテーマでアドバイスを行い、また、役員、幹部社員の研修講演なども行っている。


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