戦略を実行する第4ステップ――ミッションを浸透させる:戦略が確実に実行され、業績が上がる組織の動かし方(2/2 ページ)
ミッションは浸透し、日々の行動に落としこまれていなければ何の役にも立たない。ミッションが浸透していないと感じるのであれば、その方法を考える必要がある。
組織を束ねるミッション
それでは、個人を連携させて能力を発揮させるために必要なものは何だろうか。
それは、組織の目的、目標が明確であること。そこから組織はパワーを発揮し、個人もそれに向かって努力するようになる。当たり前だが、組織のミッションであり、ビジョンが重要である。もちろんミッションのない会社はないと思うが、それをいかに浸透させるかがとても大切になる。
ミッションやビジョンという言葉を使用するに当たりここで定義しておきたい。ミッションとは、組織としての使命や目的である。存在理由とも位置づけられる。ビジョンとはミッションが達成している場面であり、目標を達成している状態ともいえる。最近ミッションを浸透させている組織の方に会う機会があった。いくつか紹介したい。
本田技研工業がとてもいいミッションやビジョンを持っている。彼らは「フィロソフィー」という言葉を使っている。
Hondaフィロソフィーは、「人間尊重」「三つの喜び」から成る"基本理念"と、"社是""運営方針"で構成されています。Hondaフィロソフィーは、Hondaグループで働く従業員一人ひとりの価値観として共有されているだけでなく、行動や判断の基準となっており、まさに企業活動の基礎を成すものといえます。
Hondaは「夢」を原動力とし、この価値観をベースにすべての企業活動を通じて、世界中のお客様や社会と喜びと感動を分かちあうことで、「存在を期待される企業」をめざして、チャレンジを続けていきます。
ホンダではPhilosophy bookを作り、研修の中で取り入れるとともに、ワイワイガヤガヤ日々コミュニケーションを取る中で、常に話し合っているという。
花王では花王ウェイというものを掲げている。
「花王ウェイ」は、花王グループの企業活動の拠りどころとなる、企業理念(Corporate Philosophy)です。中長期にわたる事業計画の策定から、日々のビジネスにおける一つひとつの判断にいたるまで、「花王ウェイ」を基本とすることで、グループの活動は一貫したものとなります。また一人ひとりの社員にとっては、会社の発展と個人の成長を重ね合わせ、仕事の働きがい、生きがいを得るうえで欠かすことのできない、指針でもあります。
花王グループの各企業・各メンバーは、「花王ウェイ」をマニュアルや規則としてではなく、それぞれの仕事の意義や課題を確認するための拠りどころとして共有しています。
花王では、定期的に部署ごとなどで花王ウェイを読み、話し合うワークショップを開催している。花王ウェイを日々の仕事にどのように落とし込むか、日々どのように行動するかと議論している。
イケアは次のようなビジョンを掲げている。
イケアのビジョンは「より快適な毎日を、より多くの方々に」。優れたデザインと機能性を兼ねそなえたホームファニッシング製品を幅広く取りそろえ、より多くの方々にご購入いただけるよう出来る限り手ごろな価格でご提供するという、イケアのビジネス理念が、このビジョンを支えています。
これをもとに毎年パートの人も社員も全員が参加し、議論し、アクションプランを作っているそうである。
ミッションは浸透していなければ意味がないし、それが日々の行動に落としこまれていなければ、何の役にも立たない。ミッションが浸透していないと感じるのであれば、ミッションについてみんなで話し合う機会をぜひ設けてほしい。「どういう意味なのか」「どういう行動をとるのか」を話す。人は腹に落とし込まないと行動しない。
ちなみにビジネスコーチ社のミッションは「人や組織の目標達成の実行を支援する」ことであり、ビジョンは「1社に1人ビジネスコーチをつくる」ことである。
昨年経営者の行動が問題になった大王製紙やオリンパス。ミッションはあったはずだが、経営層はそれに沿って行動ができていたとはいいがたい。ミッションやビジョンは実行してこそ意味がある。そして、経営者自らが実践し、実行することで組織に属する全ての人がついてくるのである。ミッションを浸透させて、組織の力で勝つ、それが求められている。
今回は戦略を実行する第4ステップとしてミッションを浸透させることについて話した。次回は戦略を実行する第5ステップとして、タクティックミーティングとアクションミーティングについて話す。
著者プロフィール
細川馨(ほそかわ かおる)
ビジネスコーチ株式会社代表取締役
外資系生命保険入社。支社長、支社開発室長などを経て、2003年にプロコーチとして独立。2005年に当社を設立し、代表取締役に就任。コーチングを勤務先の保険会社に導入し、独自の営業システムを構築、業績を著しく伸ばす。業績を必ず伸ばす「コンサルティングコーチング」を独自のスタイルとし、現在大企業管理職への研修、企業のコーポレートコーチとして活躍。日経ビジネスアソシエ、日経ベンチャー、東商新聞連載。世界ビジネスコーチ協会資格検定委員会委員、CFP認定者、早稲田大学ビジネス情報アカデミー講師。
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