検索
連載

まわりを味方に付けた人が成功する――共に学び、共に創るグローバル時代のスマートリーダー術――100人の経営層から(2/2 ページ)

成功している人は、多くの仲間を巻き込み、思いやり、仲間が活躍できる場を提供している。自分1人で成功しているわけではない。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

サーバント・リーダーシップとインクルーシブ・リーダーシップ

 Servant Leadership(サーバント・リーダーシップ)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。現在経済環境が良くない中で、政治の場でも経営の場でも強いリーダーシップが必要という論調が高まっています。強いリーダーシップとは自ら先頭に立って事業を引っ張ったり、部下への指示命令を徹底させたりするリーダーが思い浮かびますが、部下の自主性を阻害して、継続的な成長を妨げる弊害を生むこともあります。

 これとは逆に、リーダーが組織のメンバーを支援することによって、組織の潜在的な力を発揮させる、これが「サーバント(奉仕する)・リーダーシップ」という考え方です。米AT&Tでマネジメント研究センター所長を務めたロバート・グリーンリーフ氏が定義したものです。

 一方で、現在は、Inclusive Leadership(インクルーシブ・リーダーシップ)という考え方が出てきました。InclusiveはInclude(巻き込む)から派生した言葉です。米国の教育界で注目されている新しいリーダーシップの概念で、21世紀には、今までのように一部のエリートがリーダーシップをとるのでなく、一人ひとりのなかにあるリーダーとしての資質を引き出しながら、総体としてのリーダーシップを育成する形が主流になるというものです。これで若い人が社会的な責任感を強く持つようになります。

 ダイバーシティという言葉がありますが、グローバル時代は多種多様なバックグラウンド、価値観を持った人たちと渡り合わなければなりません。意見が合わない人たちを敵と考えるのではなく、みんなを巻き込み(include)、それぞれの力を引き出していく。「まわりの人は敵ではない、仲間である」ある経営幹部が言っていました。

 「リーダーの役割はまわりの人が楽しみながら働ける環境をつくること」と多くの経営層が言っています。サーバント・リーダーであり、インクルーシブ・リーダーである。その両方が求められているのではないかと思います。

 米国の大学院で学んだ友人が、授業の最初に話された高齢な教授の言葉が印象に残ったと言っていました。

 「わたしはあなたたちが知らないことを知っている。授業を通していろいろ教えたい。そして、君たちはわたしが知らないことをたくさん知っている。それをぜひわたしに教えてほしい」

 組織のリーダーにとっても同じことがいえるのではないでしょうか。

 「自分が知っていることを教えるし、君たちが知っていることを教えてほしい。そして成果を出していこう」

 今回は「まわりを味方につけた人しか成功しない――共に学び、共に創る」ということに焦点を当てました。ウォルト・ディズニーが次のような言葉を残しています。「テーマパークは永遠に完成しない」コミュニケーションも永遠に完成しないのかもしれません。日々工夫し、磨き、鍛錬していくことが大事ではないかと思います。次回は、コミュニケーションの現場で話題を呼んでいる「キュレーション」について話します。

著者プロフィール

林正愛(りんじょんえ)

BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ、ファイナンシャルプランナー、英検1級、TOEIC955点。津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業。British Airwaysに入社し、客室乗務員として成田―ロンドン間を乗務。その後中央経済社にて経営、会計関連の書籍の編集に携わった後、日本経済新聞社に入社し、経営、経済関連の書籍の企画および編集を行う。2006年4月に退職し、「眠っている才能を呼び覚ませ」というミッションのもと、優秀な人たちが活躍する場を提供したいという思いから、同年10月にアマプロ株式会社を設立。仕事を通じて培ってきたコミュニケーション力や編集力を活かして、企業の情報発信をサポートするために奔走している。

企業の経営層とのインタビューを数多くこなし、その数は100名以上に達する。その中からリーダーの行動変革に興味を持ち、アメリカでエグセクティブコーチングの第一人者で、GEやフォードなどの社長のコーチングを行ったマーシャル・ゴールドスミス氏にコーチングを学ぶ。現在は経営層のコーチングも行う。コミュニケーションのプロフェッショナルが集まった国際団体、IABC(International Association of Business Communicators) のジャパンチャプターの理事も務める。2012年4月からは慶応義塾大学メディアデザイン研究科でも学ぶ予定。著書『紅茶にあう美味しいイギリスのお菓子』(2000年、アスペクト)。2児の母。


前のページへ |       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る