“許す”ということ:田中淳子のあっぱれ上司!(3/3 ページ)
若いころは誰でも、いろいろな失敗をしたはずだ。その失敗を乗り越え(過去の自分に比べれば)知識も経験もついて失敗しなくなったのは、誰のおかげなのだろうか?
このとき学んだことはたくさんあるが、中でも“許す”ことの大切さは心に刻まれた。もしよろしくない要素のある人物と共に仕事をすることになって、でも相手がそこから脱却して頑張り始めたのを見つけたならば、いつまでも過去の彼・彼女にとらわれず“許す”ことにしよう、と心に決めた。
許されてきた過去、許す未来
時々、こんな会話を耳にすることがある。
「○○さんって、最近張り切っているよね」
「そういえば、そうだね。でもさあ、前は愚痴っぽかったし、全然積極的に動かなかったからなあ。素直に喜べないね」
周囲が「今はよくても、ちょっと前がダメだったから」と過ぎ去った過去を引き合いに出してしまうのだ。これでは心を入れ替えて頑張ろうとしている彼・彼女の気分や行為に水を差すことになりかねない。
あなたにだってかつてできなかったことが多数あって、それをお目こぼししてくれた先輩や助けてくれた同僚がたくさんいたはずだ。それだけではない。ネガティブな発言ややる気のなさなどの過去の不作法、不調法を許してもらってもきたはずだ。これまでの仕事の中で、数々の問題を水に流してくれた人が多数いるはずだ。
そのことをもう一度思い出して、今度は“許す”というまなざしを部下や後輩に向けてもらいたい。
過去に何かあったとしても、今しっかりと仕事をしている人が周囲にいるならば、彼・彼女の“今”だけを見つめ、「張り切っているね」「最近、いい表情しているねえ」「この調子でこれからも頑張れ」と声をかけてやってほしい。
一度停滞した成長も、“許される”ことからまた加速するのだから。
著者プロフィール:田中淳子
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー。
1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで延べ3万人以上の人材育成に携わり27年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。
著書「速効!SEのためのコミュニケーション実践塾」(日経BP社)、「はじめての後輩指導」(日本経団連出版)、「コミュニケーションのびっくり箱」(日経BPストア)など。ブログ:「田中淳子の“大人の学び”支援隊!」
Facebook/Twitterともに、TanakaLaJunko
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