「出現する未来」を実現する7つのステップ――観る:Seeing(後編):U理論が導くイノベーションへの道(2/2 ページ)
それぞれが自分の行動や仕事の仕方を見直すサイクルがしっかりと組み込まれていれば、サービスの質はどんどん高くなり、他とは一味違ったサービスが提供できるようになる。
「保留」の力を高める方法
「保留」の筋力は、一朝一夕では身につかないものの、比較的手掛けやすい訓練法を最後の締めくくりとして、紹介します。
「保留」の訓練法
1、思考の吐き出しと棚卸し
頭の中で渦巻いている思考を、まず徹底的に吐き出しつくすことによって、「保留」が生じやすい状況を作りやすくなります。その吐き出しは、誰かに聴いてもらうというやり方もありますし、紙にひたすら書き続けるというやり方もあります。口頭で吐き出す場合、何度も同じことを繰り返して口にしてしまうこともあるので、どちらかというと紙にひたすら書き続けた方が記録が残る分、無駄な繰り返しが生じづらく、効果が高いように思います。
例:マインドマップ、ポストイットを使った各種発想法、記述式内観、マンダラチャート等
2、観察力の向上
ダウンローディングに陥り続けてしまう理由の一つは、自分が実感しているものが単なる解釈であるにも関わらず、そのことに気付かず、事実と解釈を混同し、解釈を現実として扱ってしまうことにあります。目の前で起きていることを自分の解釈を入れずに観察できればできるほど、思考の渦に巻き込まれず、「保留」をしやすくなります。これを可能にするためには、目の前で起きていることをちゃんと観察できる力を養うのとともに、内側で渦巻く思考や解釈に気付く力を養うという両側面での訓練が必要になります。そのどちらかだけでも、「保留」の筋力は高まりますが、両方の訓練を行えば、行うほど、「保留」が自然と身につきやすくなります。
例:四行日記、内観、座禅、瞑想、ボイスミラーリング等
3、メタ認知力の向上
「2、観察力の向上」にもつながりますが、メタ認知と呼ばれる「自分自身の認知自体を認知する」力を高めることも「保留」の筋力を高める上において有効です。例えば、自分がこの瞬間「この手の問題は苦手だなあ」と認知しているとしたら、そのように認知していること自体を認知するということになります。メタ認知力が高まれば、高まるほど、反応的な思考に没入せずにすむため、「保留」をしやすくなります
例:コーチング、四行日記、内観、座禅、瞑想等
以上が「観る(Seeing)」の紹介でした。あまりに奥が深くて気後れしそうになったかもしれませんが、「観る(Seeing)」という状態を維持できればできるほど、「開かれた思考」にアクセスし、これまでには得られなかった考えが浮かんできたりします。ですので、気軽に楽しみながら訓練するのがよいかと思います。
次回は3番目のステップである「感じ取る(Sensing)」を紹介します。
著者プロフィール
中土井 僚
オーセンティックワークス株式会社 代表取締役。
社団法人プレゼンシングインスティテュートコミュニティジャパン理事。書籍「U理論」の翻訳者であり、日本での第一人者でもある。「関係性から未来は生まれる」をテーマに、関係性危機を機会として集団内省を促し、組織の進化と事業転換を支援する事業を行っている。アンダーセンコンサルティング(現:アクセンチュア株式会社)他2社を通じてビジネスプロセスリエンジニアリング、組織変革、人材開発領域におけるコンサルティング事業に携わり2005年に独立。約10年に渡り3000時間以上のパーソナル・ライフ・コーチ、ワークショップリーダーとしての活動を行うとともに、一部上場企業を中心にU理論をベースにしたエグゼクティブ・コーチング、組織変革実績を持つ。
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