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幼児教育においてぶれない信念を持ち、顧客であるお母さんに気付きをもたらす経営トップに聞く、顧客マネジメントの極意(2/2 ページ)

日本だけではなく、中国、シンガポール、ベトナム、タイ、バンコクなどアジアを中心に13の国と地域に教室が広がっている。成果が見えにくい幼児教育の分野でここまで広まった背景にはどのような信念、取組みがあったのだろうか。

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七田社長(右)と聞き手の井上氏(左)

 七田式教育では、子どもの見方を「たかかひがそ」という6つのポイントにまとめています。1つ目は「短所を見ない」。できないところを責めるのではなく、いいところを伸ばしてあげましょうということです。2つ目は「過程とみる」。目の前の子どもの姿は成長途中で、可能性を秘めた姿だととらえることです。3つ目は「完璧主義で育てない」。70点、80点で合格。第一段階はクリアしているという風に認めてあげます。

 4つ目は「比較しない」。兄弟、友達と比較してはいけません。お兄ちゃんの得意なことと、弟の苦手なことを比較しても意味はありません。比較するなら、その子の昔の姿と今を比べて、成長したところをほめてあげることが大切です。5つ目は「学力中心で育てない」。勉強ができないくらいで叱ってはいけません。それよりも、子どもの人間性をほめるとか、得意な科目をほめることが大切です。最後の6つ目は「そのままで100点とみる」。ありのままの子どもをそのまま認めてあげることで、親子の信頼関係は成り立つのです。この「たかかひがそ」は幼児教育だけではなくて、社員教育になど教育全般にいえることだと思います。この子どもの見方をお母さんに分かってもらい、いつも心に留めて、子どもと向き合ってもらうことを目指しています。

「勉強よりも、友達を作りなさい」父に言われた衝撃の言葉

井上:創始者であるお父様から学ばれたことも多いのではないでしょうか。

七田:本当の親の愛というものは何なのかを経験をもって感じたことが何度もありました。高校時代の話です。私は進学校に通っていて、学校の寮で生活をしていました。その時に相部屋になった人が毎日日替わりで友達を連れてきて、遊ぼうと誘って勉強の邪魔をしてきました。それが毎日続き、勉強に集中できない日々が続きました。その頃の私は、成績を落とすわけにはいかないと焦り、父に連絡をして、下宿をさせてほしいと頼み込みました。ところが、父の答えは当時の私が予想していたものとは正反対で、とても驚いたのを覚えています。

 父は、勉強よりも友達作りを大切にしなさいと言ったんです。「勉強は後から取り返しがつくものだけど、友達は作ろうと思ってもそう簡単に作れるものではない。勉強だけを頑張ったとしても、誰もそれを喜んでくれる人はいない。友達を作ることの方があなたにとって人生の財産になるんだ。」という父の言葉を聞いて、確かに父は学力中心の考え方をしていなかったと気付きました。そういえば、一度も「勉強しなさい」と言われたことはありませんでした。私が勝手に、成績がよい自分であり続けないと親に認めてもらえないと思っていました。このエピソードは本当に衝撃的で、人生のターニングポイントになりました。このときの気付きがなかったら、今の私はいなかったかもしれません。

絵本で子どもの心を育て、お母さんに気付きを与える

井上:普通は「勉強よりも友達を作りなさい」とはなかなか言えないですよね。このエピソードには七田式教育のエッセンスが表れているような気がします。お母さんの教育が裏テーマとのことでしたが、厚さんが社長になってから、新しく取り組んだことはありますか。

七田:今は、絵本に力を入れています。心を育てるための教材として絵本を作り始めました。子どもを上手に導けるお母さんもいれば、そうではないお母さんもいます。どうしても個人差があります。何をしたらいいか分からず子育てに悩んでいたり、成果が出ないことをやっているお母さんもいるでしょう。そういった場合でも、絵本を読むことによって子育てがうまくいく状態を作り出すことができます。絵本を読んでくれれば、子どもに大切なことを伝えられます。その内容によって、お母さん自身も自分の過ちに気づいてくれることもあります。絵本に出てくる親子の対話とは正反対のことをしていたと自分を振り返るお母さんもいました。周りから言われても、なかなか変わることは難しいと思います。お母さんが自分で過ちに気付くからこそ、変われるのです。

 去年まで8年連続右肩下がりの業績で、15億くらいあった売上げが8億台にまで下がっていたのですが、現在は回復しつつあります。絵本の事業に力を入れるようになったことで、七田式教育に興味を持ってくれる人が増えたことがひとつの回復の理由になっていると思います。私たちが作るべきものは、お母さんと子どもの関係をよくするものです。お母さんの要望をかなえるだけではなく、本当の意味で子どもの幸せを実現するための教育方法、子どもとの向き合い方をお母さんたちに伝えていくことが使命だと思っています。親子が笑顔で向き合え、お母さんが自ら子どもへの接し方を改善してくれることに成功した絵本は、七田式教育において大きな役割を果たしてくれているなと感じています。

対談を終えて

お母さんへの気付きをもたらすことが、より深い顧客満足につながっているのだなと感じました。お父様から受け継いだ確かな信念と方法をもって、これからもたくさんの親子の笑顔を作ってください。

プロフィール

井上敬一

ブランディングコミュニケーションデザイナー

株式会社FiBlink代表取締役

兵庫県尼崎市出身。立命館大学中退後、ホスト業界に飛び込み1カ月目から5年間連続ナンバーワンをキープし続ける。当時、関西最高記録となる1日1600万円の売り上げを達成。業界の革命児として、関西最大規模のホストクラブグループの経営業を経て、現在は実業家として企業、個人のブランディングやアパレル、サムライスーツなどのプロデュースを手掛ける他、人に好かれるコミュニケーションを伝える研修・講演を展開している。また、WEBセミナー「プレジデントキャンパス」により、中小企業経営者の学びの場をもっと身近なものにして日本経済を牽引する役割を目指す。

圧倒的な実績に裏付けられたコミュニケーションスキルをわかりやすく説く講演は、多くの企業・団体から支持を受けている。これまで数多くのメディアに取り上げられ、独自の経営哲学で若いスタッフを体当たりで指導する姿はフジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』で8年にわたり密着取材され、シリーズ第6弾まで放映されている。

 主な著書に、「ゴールデンハート」(フジテレビ出版)、「人に好かれる方法」(エイチエス株式会社)などがある。


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