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デジタルビジネス・イノベーションは誰が興すのか?──デジタルは今や、舞台中央の主役 さて、あなたは?Gartner Column(3/3 ページ)

エンタプライズITは「第3の時代」にどっぷりと突入していることが分かった。グローバルのCIOたちは、この第3の時代における主役は自分たちだと自覚している。日本の結果は?

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デジタル化がもたらすビジネスチャンスをものにするために変化させるコトとは

 デジタル化がもたらすビジネスチャンスを前に、実は、難しい課題がある。それは、大半の企業のITは長年かけて一連の行動や思考パターンを発展させてきた。しかしながら、これらが今、デジタル化の機会を阻む恒常的な問題になっているのである。

 ◎レガシー・テクノロジと旧来のマインドセット(心構え)は、依然大勢を占めているため、大半の企業はイノベーションを未だにテクノロジ・パラダイムの中で捉えている。これを継続すると、デジタル化の機会を逸失してしまうことを理解しなければならない。デジタル・リーダーシップとは、旧来の方法を反転させるということだ。まず、ITでビジネスを支援するというアプローチを完全に止めなければならない。

 つまり、既存のビジネスからシステム化の要件が提示されるか、一緒に考えるというアプローチは今すぐに止めるようにという警告だ。これからは、デジタルな世界と、そこでの可能性を出発点にする(クラウド、モバイル、高度なコンテキスト化を第一に考える)。そして、情報とテクノロジを使って「目的地に達するにはどうすればよいか」を検討しなければならない。

 ◎価値の管理/測定は、あらゆるビジネスができれば触れないでおきたい「小さな秘密」のようなものである。大半の企業とCIO は、最も価値あるものや最も注目しなければならないもの(デジタル・ケイパビリティを構築することの価値など)より、測定しやすいもの(IT コストなど)に偏って重点を置いている。さらに言えば、一度ビジネスケースが承認されると「プロジェクトの価値」を重視する姿勢が弱まり、タスク管理のゲームになりがちである。これも、間違いなく反転させる必要のある旧来方法のひとつである。

 ◎「ITの工業化」という第2の時代において、「人に関するリーダーシップ」は正確性、規律、厳格管理を重視しながら改善されてきた。したがって、生来の性質とその後の環境により、CIO は「強制型」の実用主義的なリーダーへと進化した。デジタル時代の特徴を考えると、こうした偏向は危険である。

 CIO は、旧態のリーダーシップ・スタイルを弾き飛ばし、よりビジョン主導型で他者を鼓舞するようなリーダーシップ・スタイルに変えなければならない。CIO も既にこのことを知っている。今回、調査したCIO の73% は、過去3 年間で自分のリーダーシップ・スタイルを変えたといい、さらに、75%は今後3 年間で変えなければならないと語っている。つまり、ビジョン主導型で他社を鼓舞するように変化するまでは何年もかかると考えているということだ。

 これらの問題は目新しいものではないが、解決することによるメリット、無視することによる危険性は、急速に拡大している。日本でのデジタル・ビジネスに関する最大のリスクは、この問題を無かったことにしようとする動きが大勢を占めていることだ。

 次回以降で、デジタル・ビジネスの担い手が、なぜCIOであるべきなのか、そして、CIOであることのメリットを説明したい。

著者プロフィール:小西一有 ガートナー エグゼクティブ プログラム (EXP)エグゼクティブ パートナー

小西一有

2006年にガートナー ジャパン入社。CIO向けのメンバーシップ事業「エグゼクティブ・プログラム(EXP)」において企業のCIO向けアドバイザーを務め、EXPメンバーに向けて幅広い知見・洞察を提供している。近年は、CIO/ITエグゼクティブへの経営トップからの期待がビジネス成長そのものに向けられるなか、イノベーション領域のリサーチを中心に海外の情報を日本に配信するだけでなく、日本の情報をグローバルのCIOに向けて発信している。


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