デジタルビジネスに欠かせない3つの技術的要素:Gartner Column(3/3 ページ)
刷新されたエンタプライズ・アプリケーションは、デジタル・コアを構成する主要な技術的要素である。新しいデジタル・ビジネスモデルがデジタル経済に積極的に関与できるようになる。
デジタル・ビジネスには高度なアナリティクスが必要
デジタル・トランザクションがデータの種類と量を増やす中、企業にはより 高度なビジネス・インテリジェンスを使って新しい情報から価値を抽出することが求められている。
今後、従来型のB2Bモデルの企業と産業全体がB2B2Cモデルへと拡張するにつれ、かつては直接的な顧客ではなかった(少なくともこうした企業/産業の目には見えていなかった)オーディエンスとのやりとりが増えるだろう。また、新たに追加されるデジタル・チャネルが、ブログ、ソーシャル・データ、動画などから新しいタイプのデータをさらに大量に捕捉することになる。
新しいエンド・ツー・エンド・プロセスは、複雑なビジネス・シナリオを増やす。その本源は、かつて存在しなかった統合チャネルだ。企業は、このように新たに取得した全データから最大の価値を引き出すために、アナリティクス・ソリューションを実装するべきである。
企業によっては、人またはモノを対象としたクロスセリング/アップセリング・キャンペーンをサポートする予測機能や処方的機能を持った、より高度なアナリティクスからメリットを得られるだろう。新たなデータを収集しても、アナリティクスに基づいて行動を起さなければ、重要な価値の源泉を無駄にすることになる。
デジタル・コアの整備に余念のない企業への調査では、あらゆる企業にとって極めて重要なひとつのアクションを示している。それは、デジタル・ビジネスは急速に成長するため、明快なデータ戦略を早急に策定する必要があるということだ。特定の産業においてデジタル・ビジネスの売り上げが物理的世界からの売り上げを越えるとき、カギを握るのが拡張性(スケール)である。
Financial Times社では既に、デジタル化による売り上げが全体の35%を占めている。高度なアナリティクスが必要になると予想した同社はデータを収集、分析、予測するための成熟したプロセスを整備している。これらのプロセスこそ、近い将来、デジタル・ビジネスの意思決定の拠り所となるものだ。
モノのインターネットにより、大規模なエコシステムへと流入する情報の流れを監視、仲介する高度なアナリティクス・プラットフォームが強く求められるようになっている。これは、データを収集して集約し、最後には将来のビジネス・アクションの基盤を提供するものでなければならない。
大半の企業には、情報を蓄積するデータ・ウェアハウスがあり、過去を振り返るタイプのアナリティクスで使用されている。しかし今必要なのは、既存の情報から学習し、新たな情報を生み出し、先を見据えたインテリジェンスを提供する予測的、処方的なアナリティクスである。
デジタル・コアがデジタル経済での必須条件であることは理解できた。しかし、ほとんどのユーザ企業では、このようなテクノロジを実装するだけの人材が存在しないことも真実である。早急に獲得し育成することが望まれるが、この問題に対処する方策については、次回述べることとする。
著者プロフィール:小西一有 ガートナー エグゼクティブ プログラム (EXP)エグゼクティブ パートナー
2006年にガートナー ジャパン入社。CIO向けのメンバーシップ事業「エグゼクティブ・プログラム(EXP)」において企業のCIO向けアドバイザーを務め、EXPメンバーに向けて幅広い知見・洞察を提供している。近年は、CIO/ITエグゼクティブへの経営トップからの期待がビジネス成長そのものに向けられるなか、イノベーション領域のリサーチを中心に海外の情報を日本に配信するだけでなく、日本の情報をグローバルのCIOに向けて発信している。
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