コグニティブに向かうモバイルアプリ――成功の秘訣は?
IBMの調査では、3分の2のアプリ開発プロジェクトがリスクに直面しているとの結果が。プロジェクトを成功に導くための秘訣とそれを実現するIBM MobileFirst Foundationとは。
アプリ開発の3分の2は失敗プロジェクト
IBM Center for Applied Insightsが、世界9カ国、585人のモバイルに特化したアプリ開発者および開発担当マネジャーを対象に実施した調査「5つ星モバイル開発: モバイル開発プロジェクトを成功させるのに必要な条件とは」では、「3分の2のアプリ開発プロジェクトが、予算、スケジュール、プロジェクト目標の3つすべてを完全に達成することができなかった」と報告されている。
日本アイ・ビー・エム(日本IBM)クラウド事業本部 クラウドエバンジェリストの佐々木志門氏は、「これまでのシステム開発においては、トラブルプロジェクトが発生する割合はわずかで、3分の2がトラブルプロジェクトになるという話は聞いたことがありません」と話す。それでは、3分の1の成功プロジェクトにするためには、何が必要なのだろうか。
同じ調査報告では、アプリ開発プロジェクトを成功に導くポイントとして、「チーム編成」「綿密なコラボレーション」「プラットフォーム」「ユーザー分析」の4つを挙げている。もっとも重要なのはチーム編成で、5年以上のアプリ開発経験、業界・業務の専門知識、優れたコミュニケーション能力を兼ね備えたメンバーでチームを編成することが必要であると報告されている。
このチームが、設計、ユーザーエクスペリエンス、品質保証、IT運用、ビジネスの利害関係者やエンドユーザーなど、すべてのプロジェクト関係者と密接にコラボレーションしながら、MADPやMBaaSなどのプラットフォームを活用したアジャイル開発によりプロジェクトを推進していくことが必要。さらにユーザー分析を実施することで、ユーザーの行動を理解し、その結果を次のプロジェクトに生かすことも重要になる。
「ユーザー分析は重要な成功要素の一つでありながら、日本ではあまり重視されていませんでしたが、ユーザーの要望を取り入れて活用してもらわなければ価値が出ません。従来型のウォーターフォール開発と違い、モバイルアプリはアジャイル開発なので、テスト中も稼働後もユーザー分析結果から改善が可能となり、より快適なユーザビリティーをスピーディに提供できるようになりました。」(佐々木氏)
ユーザーの分析から必要な要件が明確になり、ムダな機能を開発する必要がないため、開発期間の短縮、工数やコストの削減などの効果も期待できる。これを具現化するのが、モバイルアプリ開発プラットフォーム(MADP)である。
MADPとクラウドサービスで何ができるのか
MADPは、フレームワークやソフトウェア開発キット(SDK)、ユーザーインタフェース(UI)部品、テスト支援などの「アプリ開発基盤」と、プッシュ、セキュリティー、認証、ID管理、ストレージ、データベース、分析・可視化、連携・統合などの「サーバ機能」で構成される。MADPを利用することで、高い柔軟性により、新しいサービスを市場に投入するまでの時間を短縮できるほか、モバイルテクノロジーの進化に対する俊敏性を向上できる。
またサーバ機能の領域では、必要な機能のすべてがクラウドサービスとして提供される「MBaaS(Mobile Backend as a Service)」の利用が有効になる。MBaaSを活用することで、ハードウェアの調達や設定が不要になり、短期間で開発を開始できる。IBMの調査では、成功プロジェクトが開発にクラウドベースのプラットフォームを使用している割合は、使用していない場合より35%高いと報告されている。
「ここに"お薬手帳"アプリがあるのですが。これは病院でもらった処方箋を事前に薬局に送信し、窓口で待たずに薬を受け取ることができるアプリです。どういうわけかタブレット端末から利用できなかったので、サポートセンターに連絡すると、"OSのバージョンや端末の詳細な機種を教えてください"という返事が返ってきました。結果として、このアプリは、スマートフォンでは利用できるが、タブレット端末では利用できないものでした。はたして一般の人が、スマートフォンのOSのバージョンを聞かれて、すぐに答えることができるでしょうか? これでは、多くの人がその時点でアプリの利用をめんどくさいと感じてしまうと感じました」(佐々木氏)
例えばMADPを利用して、アプリの問い合わせシステムを構築すると、利用者からの問い合わせ内容とともに、そのときに使っていたスマートフォンの機種やOSのバージョン、利用ブラウザなどの端末情報を取得することができる。これにより利用者の負担を軽減しながら、問い合わせに迅速に対応できるようになる。佐々木氏は、「MADPを利用することで、これまで実現が困難だった機能も、容易に構築できます」と話している。
IBM MobileFirst FoundationとIBM Bluemix
IBMが提供するMADP、「IBM MobileFirst Foundation」はモバイルアプリを効率的かつ効果的な方法で開発し、機能を強化しながら継続的な展開を実現できる。最新版では、プロジェクト当初はプラットフォームを採用せずに開発してしまったアプリに対して、後からプラットフォームの機能を付加できるなどの移行容易性機能が強化されている。またクラウド開発環境であるIBM Bluemixを統合することでアプリを素早く拡張することができる。
現在、IBM Bluemixで提供されているモバイルと関係の深いサービスは、「環境や状況を把握」「コグニティブ」「API接続性」「品質・クオリティ」「UI開発」「管理・コントロール」の大きく6つある。
「環境や状況を把握」では、例えばIBM傘下のThe Weather Companyが提供する天気予報APIなど、位置情報を使ったアプリを構築することができる。
「コグニティブ」は、対話型のAPIを利用したアプリを開発できる。すでにIBM Watsonとの連携が可能な、iOS用のWatson APIが提供されている。また「API接続性」は、アプリとアプリの連携、企業と企業の連携などの場合にシナジー効果を得るためのAPIとして重要になる。
さらに「品質・クオリティ」は、アプリ開発の品質向上のためのプラットフォームを提供。「UI開発」は、コーディングをほとんどすることなくアプリを開発するためのデザイナー機能。「管理・コントロール」は、バージョン管理や運用管理の機能をモバイルアプリ開発に提供している。
「スマートフォンやタブレット端末は、トラディショナルなIT環境やノートPCの代替えではなく、新たな経済圏を生み出しています。モバイルアプリの開発環境も整ってきており、今後、多くの便利なアプリが生まれ、新しいビジネスが次々と起こるのではと期待しています。実際アプリ構築のワークショップに参加した人たちからは、その簡単さとスピードに驚きながらも、ワクワクしている雰囲気が伝わってきました」(佐々木氏)
IBM MobileFirst Foundationがもたらすもの
IBM MobileFirst Foundationでは、管理下にあるアプリやデバイスを一元的に管理することができる。これにより、ユーザービリティーの向上やユーザー分析はもちろん、モバイル特有の脅威からの保護、運用と増える更新の手間とコストの削減、バックエンドシステム連携、プッシュ通知・オフライン同期などの機能も利用できる。
B2CはもちろんB2Bつまりグループ企業でアプリを配布するときに、モバイルデバイス管理(MDM)機能を利用していなくても、スマートフォンが盗難にあったり、紛失した場合、遠隔操作でアプリ単位で使えなくすることができる。これにより、セキュリティー上のリスクから守ることができる。
「社員が担当業務を外れた場合にアプリの利用をできなくしたり、人事異動の場合に必要なアプリと不要なアプリを端末単位で容易に切り替えたりできます。このとき複数あるアプリのシングル・サイン・オン(SSO)認証により、パスワードや認証を何回もしなくて良いような利便性を向上することもできます」(佐々木氏)
さらにiOS、Android、Windows 8.1, 10に対応しているので、既存のモバイルアプリ開発環境をそのまま活かし、SDKとAPIを利用して、必要な機能だけを柔軟に追加・連携することができる。こうした機能が評価され、すでに世界では1300社以上、日本では100社以上に導入された実績がある。
「今後、日本でも、モバイルアプリを開発する機会がますます増えてきます。さらにコグニティブなアプリへと発展していくのは必至です。このアプリを、MADPなしで開発することは、期間的、工数的、コスト的に困難です。IBM MobileFirst Foundationを利用することで、セキュリティーを高めながらもユーザビリティーを確保し、コスト削減が可能になります。MADPの選定が開発プロジェクト成功のカギになると考えています」(佐々木氏)
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提供:日本アイ・ビー・エム株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エグゼクティブ編集部/掲載内容有効期限:2016年9月29日