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仕事ができる人の人脈形成人脈を科学する――つながる人、引き上げる人、できる人の法則(2/2 ページ)

多くの人と一緒に修羅場を乗り越え「お互いにひと肌脱ぐことができる関係」から人脈が生まれる。その維持方法は?

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情報のハブを見つける

 もう一つの発見を皆さんに紹介します。「仕事ができるとされている人達」に修羅場を乗り越えた話を深く聴き取っているうちに、共通の行動として観察できたことがありました。

 端的に言うならば、彼らは仕事で多くの人とかかわる中で、無意識に情報のハブを敵にまわしていませんでした。

 情報のハブ(Hub)は文字通りさまざまな情報が集まり、そこを経由して分散していく場所です。組織においてのハブとは、ずば抜けて多くの情報源を持ち、自らも情報源となることのできる人やグループのことです。

 人の集合体にはかなり高い確率でハブが発生します。人的ネットワークの中に極めて多くの人とアクセスをすることができるハブが時々発生するということは、ネットワーク理論の世界で広く検証されてきました (例えばBarabassi 2002)。ネットワーク理論の台頭以前にも、人の集合体の中に極端に情報を持つ人がいることは、古くから知られていました。皆さんの会社にも、いろいろな情報を持っている人の顔が何人か浮かぶでしょう。ハブになるには職位の高低はあまり関係ありません。社歴が長いがゆえに、思いもかけない人とつながっていて情報を持っている平社員というのは珍しいことではありません。

 大事なことは、このハブを敵にまわさないことです。インタビューでは「古くからいた社員が、最終的に後押ししてくれた」であるとか「親玉みたいな人が、味方には表だってなってはくれなかったけれども自分たちの行動を黙認してくれた」といった種類の話を多く聞きました。彼らは意識的にせよ無意識であれ、ハブを自分の味方、少なくとも敵に回さない状態を維持していました。

 具体的な例をあげましょう。初めて管理職として旧態依然とした組織に着任した人を想像してみてください。どう振る舞うのか。どのような視線を浴びるのか。意地悪な視線もあるでしょうし、足を引っ張る気満々の人もいるでしょう。歓迎している人ももちろんですが、大多数は無関心かもしれない。

 着任して組織の中にいわゆる「同士」を見つけることから始めるのが、どんな場合でも最初の一手でしょう。同時に誰を敵にまわしてはいけないのかを見極めることも必要でしょう、言い換えれば組織の中で誰がハブであるのかを知るのは必要不可欠な行為だと考えています。

 ハブは情報発生源ですから、間違った情報を流されると仕事がやりにくくなるからです。ハブは多くの人とつながっているという特徴を持ちます。これは組織と人の行動を冷静に観察していれば自ずと分かるものです。一度「この人はこういう人に違いない」という勝手な思い込みを捨て、相手の行動を明察してみてください。今までと違う風景が見えてくることと思います。

 ハブと極端に仲良くする必要はありません。しかし、ハブを人脈の一人とする、人脈とまでとはいかなくても、彼らとつながっていると仕事がやりやすくなることは間違いありません。

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著者プロフィール:法政大学 ビジネススクール教授 高田朝子

モルガン・スタンレー証券会社勤務をへて、サンダーバード国際経営大学院国際経営学修士(MIM)、慶應義塾大学大学院経営管理研究科経営学修士(MBA)、同博士課程修了。経営学博士。専門は危機管理、組織行動。

主な著書『女性マネージャー育成講座』(生産性出版)、『人脈の出来る人 人は誰のために「一肌ぬぐ」のか?』(慶應義塾大学出版会)、『危機対応のエフィカシー・マネジメント −「チーム効力感」がカギを握る−』(慶應義塾大学出版会)、『組織マネジメント戦略 (ビジネススクール・テキスト)』(共著、有斐閣)


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