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言語化能力が人脈を広げる人脈を科学する――つながる人、引き上げる人、できる人の法則(2/2 ページ)

さまざまな人が一緒に仕事をしたがる人、仕事ができる人の多くは言語化する能力に長けている。

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10才児に分かるように話す

 人と上手にネットワークを構築できる人は、相手と情報交換を円滑に行える人です。自分の知識前提で話すのではなく、相手に分かるように話し仕事を達成していく。これは修羅場を切り抜けるための重要な能力であることはもちろん、仕事で成功するビジネスパーソンに必ず求められるスキルの筆頭にくるものです。

 難しいことを難しくいうのは誰でもできます。大事なのは難しいことを簡単に話す努力です。これは高等な技術です。相手が分かるように工夫して話すことが重要です。時々簡単なことを難しく話す人がいますが、どうしたものかと頭を抱えてしまいます。

 タチの悪いことに専門用語などの難しい言葉を使うと、つかっている本人がなんとなく「たいした事を言っている気分」になってしまうのです。冷静に考えるとこの状態は実に危険です。相手が理解していないことに配慮しなくなるからです。そんなことを言っても、私自身、言葉が足りないと後で反省することは多々あります。

 MBA学生には自戒の意味も込めて10才児に分かるように説明しなさい、と口を酸っぱくして言います。個人的見解ですが10才児は大人知識と子供知識の境目をふらふらしている年代だと思います。中学受験をする子供が勉強に本腰を入れる年でもあり、驚くほどの知識を持っている子供、大人になりかかっている子供、昔ながらの平均的な子供が混ざりあっているある種のカオス的集団です。彼らに理解してもらうように話すのには工夫がいります。相手に分からせる工夫はスキルです。スキルは磨くことができます。

 具体的に言うならば、まず相手と前提を一緒にすること。突然主語なく、堰を切ったように話をはじめる人がいます。その人にとっては、さまざまな思索の過程をへて発語しているのでしょうが、言われた方はまったく分かりません。話し出した方が年齢や役職が上だったりすると、周囲は余計に混乱します。あうんの呼吸が分からないやつ認定をされてしまう可能性があるからです。

 正直な話、自分だけ分かっているワールドの話をするのは不親切です。これでは相手に伝わりませんし、その人と積極的に繋がろうという意欲もなえてしまいます。何について自分が話そうと思っているのか、問題点は何か。相手の思考に寄り添い、話の前提条件を一緒にする作業は不可欠です。人間は発せられた言葉を頭から理解します。つまり、最初に「○○の案件のことなんだけれども」などと、何の話をしているのかを最初に言って、話の方向性を合わせることは少しの気遣いで簡単にできることです。

 さらに言えば、相手のことを観察し理解する。相手がどのような理解のパターンを持っているのかを推測する。その上で、話を相手に分かりやすいように組み立て、メッセージを届けるのです。人間は神様ではありませんから、全てを推測することは不可能です。しかしながら相手の立場を思いやることによってメッセージは届きやすくなるはずです。

 時間に追われている人に対して、回りくどく丁寧すぎるメッセージの伝え方をしていて、相手は聞く耳を持たなくなっているのかもしれない。ひょっとしたら、もっと情報が欲しい人にワンフレーズでしか答えてないかもしれない。いずれにせよ、自分が意識して工夫することによって、相手に対する影響力は格段に上がるのです。

著者プロフィール:法政大学 ビジネススクール教授 高田朝子

モルガン・スタンレー証券会社勤務をへて、サンダーバード国際経営大学院国際経営学修士(MIM)、慶應義塾大学大学院経営管理研究科経営学修士(MBA)、同博士課程修了。経営学博士。専門は危機管理、組織行動。

主な著書『女性マネージャー育成講座』(生産性出版)、『人脈の出来る人 人は誰のために「一肌ぬぐ」のか?』(慶應義塾大学出版会)、『危機対応のエフィカシー・マネジメント −「チーム効力感」がカギを握る−』(慶應義塾大学出版会)、『組織マネジメント戦略 (ビジネススクール・テキスト)』(共著、有斐閣)


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