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「察しろ」ではなく、言葉で示す人脈を科学する――つながる人、引き上げる人、できる人の法則(2/2 ページ)

古くから日本企業で好まれてきた「何も言わずに察しろ」というのは、現代の企業環境では成立し難い。これからは、自分の思いや考えていることを言語化するスキルが必要になる。

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観察者の視線――ニュートラルであれ

 観察しているときに邪魔になるのは、その人に対する思い込みです。特に視覚情報から得る思い込みは、初対面の場合に大きな影響をもたらします。私達は視覚の動物です。視覚から得る情報は全体の7割とも8割とも言われています。

 人間が相手の特徴に反応し、相手への印象を形成することは古くから社会心理学の世界ではハロー効果という名称で知られていました。見るからに仕立ての良いスーツを着た品の良い紳士と、汚いスウェット姿の長髪の男性とパーティーで会ったときに、多くのビジネスパーソンは前者に好意を持ち仲良くなりたいと思うでしょう。

 前者が老舗企業のオーナー一族の人間だと紹介されたら、好意はより強くなり、彼に近づきたいと思い、ちやほやするでしょうし、スウェット青年には冷たく接するかもしれない。得た情報の中で一般に好ましいとされる要素が結びつき、紳士をより高く評価するわけです。これは仕方がないことです。

 ところが実態では、老舗企業は放漫経営により倒産寸前。目の前の彼がそのA級戦犯だったとしら? スウェット青年はベンチャー企業の経営者で、彼が渾身を込めて開発した技術が世の中にイノベーションを起こしかかっていると知ったらどうでしょうか。

 あばたもえくぼ、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いとのことわざがあるように、人は好意を持った時にはとことん甘く評価をし、嫌いな部分があると、その人の全てを嫌いと思う。視覚情報は大事ですが、判断する前に立ち止まってみて下さい。自分は正確に相手を評価しているのか。小さな情報で間違った方向から勝手に判断しているのではないのか。ニュートラルな視点を常に意識することは必要です。

 スウェット青年は何でパーティーにスウェットを着ているのだろうか。服装に構わないのか、何かに没頭するタイプなのか、第一印象で判断せずに、興味を持って彼と接したならばまた違う展開になるかもしれません。

 相手に興味を持つこと。そして、なぜ?を考える習慣を続けていると、その集団の持つ独自性、行動パターン、思考傾向などがデータとして蓄積されていきます。新たな視座も得るかもしれません。

 自分なりに集めたこれらの自分以外の事象のデータをもとに、自分がどう振る舞うのかを試行錯誤しながら決定していくのです。これこそが、本質をついた言語化のために必要な作業であり、良き人脈を構築するために不可欠な要素なのです。

著者プロフィール:法政大学 ビジネススクール教授 高田朝子

モルガン・スタンレー証券会社勤務をへて、サンダーバード国際経営大学院国際経営学修士(MIM)、慶應義塾大学大学院経営管理研究科経営学修士(MBA)、同博士課程修了。経営学博士。専門は危機管理、組織行動。

主な著書『女性マネージャー育成講座』(生産性出版)、『人脈の出来る人 人は誰のために「一肌ぬぐ」のか?』(慶應義塾大学出版会)、『危機対応のエフィカシー・マネジメント −「チーム効力感」がカギを握る−』(慶應義塾大学出版会)、『組織マネジメント戦略 (ビジネススクール・テキスト)』(共著、有斐閣)


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