会計の「非」専門家が書いたビジネス数字の話――なぜ多くのビジネスパーソンが会計を分からないというのか:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
数字が苦手なコンサルタントが、数字が苦手なビジネスパーソンにしどろもどろになりながらレクチャーし始めて気付いたことがある。
今、世の中では既存の儲けの仕組みにとらわれない新たなビジネスが次々と生まれ、その勢力をますます拡大させています。
そんな勢いのあるビジネス、おいしそうなビジネスを横目に、このままではいけない、うちも何か新しいことをやらなければ、そう思っているビジネスパーソンは多いでしょう。中には、おいしいビジネスを自分で立ち上げようと、ひそかに目論んでいる人もいるのではないでしょうか。
ですが、ちょっと待ってください。
目先の新しさに翻弄され、ただそのまねをするだけではけっして商売を成功させ、儲けることはできません。儲けるどころか気が付けば借金まみれ、やっぱり隣の芝生は青かった、なんてことも大いにあり得ます。
なぜなら、商売の根底には知っておかなければいけない、そして決して踏み外してはいけない儲けの仕組みがあるからです。
はっきり言いましょう。
ビジネスには、少しの努力とリスクテイクで儲かるビジネスと、がむしゃらにがんばって多大なリスクテイクをしてもなかなか儲からないビジネスがあります。
不況になるとすぐに潰れてしまう、潰れやすいビジネスもあれば、不況であっても他の商売を尻目に儲けを出し続けられるビジネスもあるのです。
では、どんなビジネスが潰れないのか、儲かるのか?
本書ではおもに、そのルーツを鎌倉時代にまでさかのぼる質屋、また質屋を母体として繁盛しているディスカウントショップ、リサイクルショップなどを取り扱います。
営々と続いてきた質屋ビジネスは、景気のいかんにかかわらず、商売で儲け続けるためのエッセンスが凝縮されています。そしてその儲けの仕組みは、インターネットの普及など、時代とともにますます高度化するビジネスインフラをたくみに取り入れて、日々進化を遂げているのです。
それでは、あなたの街の質屋とその他のビジネスは、一体全体どこがどう違うのでしょうか。
そんな勝てる儲けの仕組みを読み解くカギを、ビジネス数字とともに読み解くのが本書の目的です。本書では、最低限のビジネス数字を用いて、古くて新しい質屋の儲けの仕組みを解明していきます。
最後に、経理や財務部門で会計を専門的に扱うビジネスパーソンは、経営戦略やマーケティングの分野も統合した経営の全体像を見渡すために必要な数字のイメージを本書から読み取ってもらえたら幸いです。
また、経営層や管理職をはじめ一般部門で働くビジネスパーソンは、本書からいわゆる財務・会計で語られる「数字」の厳密さよりは、親しみやすさを感じていただけたらうれしいです。また合わせて、教養として初めて学ぶのに必要十分なビジネス数字の範囲を知り、仕事に「使える」「使ってみよう」と思ってもらえたら、この本の出版は成功したと言えるでしょう。
本書を導入編として、その先にある厳密で高度に専門化した財務・会計のレクチャーは会計士や税理士にぜひお願いしたいと思いますが、数字という言葉を聞いただけで身構えてしまうビジネスパーソンが実務で使ってみようと思えるビジネス数字、その学習の「はじめの一歩」を踏み出してもらうための一助となれば幸いです。
著者プロフィール:新井健一 経営コンサルタント・ビジネス書作家
経営コンサルタント、アジア・ひと・しくみ研究所代表取締役。
1972年生まれ。早稲田大学 政治経済学部政治学科卒業後、大手重機械メーカー、アーサーアンダーセン/朝日監査法人(現 KPMG/あずさ監査法人)、同ビジネススクール責任者、医療・ITベンチャー企業役員を経て独立。大手企業向けの経営人事コンサルティングから起業支援までコンサルティング・セミナーを展開。テレビ東京・BSジャパン「人生が変わる人事の話」(毎週金曜日夜11:00)に人事の専門家としてレギュラー出演。
著書に「いらない課長、すごい課長」(日本経済新聞出版社)などがある。
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