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日本最大級のクラウドファンディングサービス「Readyfor」――成功率70%の秘密に迫る経営トップに聞く、顧客マネジメントの極意(2/2 ページ)

「誰もがやりたいことを実現できる世の中をつくる」創業時の資金に乏しい場合でも、金銭の返済なしに資金調達が可能に。

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米良 プロフェッショナルとしてプロジェクトや実行者をサポートし、その人のやりたいことを言語化し、いいところをしっかりと世の中に伝えることがキュレーターの役目です。

 世界的に見ても、キュレーターがすべてのプロジェクトをサポートしているクラウドファンディングのサービスはありません。基本的にクラウドファンディングは自由に使ってもらうプラットフォームだからです。

 しかし、日本でクラウドファンディングを根付かせようと思ったら、ただ単にプラットフォームを立ち上げて実行者に自由に使ってもらうだけでは不十分です。日本人にとっては、自分のやりたいことをみんなに話し、さらにお金を集めることはかなりハードルが高いことです。資金を集めるためのノウハウの提供、バッシングを受けないためのストーリー作りをしっかりとサポートできる体制が必要だと考え、「Readyfor」を立ち上げる際、キュレーターという役割を作りました。


米良氏(右)と聞き手の井上氏(左)

井上 プロジェクトをどう伝えるかを一緒に考えてくれるのですね。

米良 そうなんです。プロジェクトスタートの基準をクリアしたら、キャッチコピーの作り込みや動画の撮り方のアドバイスといった具体的なページの作成から、プロジェクトスタート時のPRのプランニングや実務の手伝いまでをトータルで行います。事業の内容、事業にかける思いさえあれば、あとはキュレーターがクラウドファンディング成功へ向けてしっかりとサポートします。

井上 キュレーターのサポートがあることによって、成功率が高まっていそうですね。

米良 世界的な標準でいうと、クラウドファンディングの成功率は20〜30%です。そういった中で、われわれは65〜70%の成功率を誇っています。プロジェクト数も日本でナンバーワンです。そういった中で、高水準の成功率を維持しているのは、やはりキュレーターの力が大きいと思います。

井上 キュレーターの存在は、プロジェクトを始める人からすると、すごく安心ですよね。「Readyfor」の顧客であるプロジェクトの実行者と支援者の満足度は、双方がつながっている感じがします。実行者への手厚いサポートが支援者を喜ばせることにつながっています。

顧客創造、ファン作りにまで貢献

井上 印象に残っているプロジェクトを教えてください。

米良 いろいろなジャンルのプロジェクトがある中で、地方創生のプロジェクト、特に場所作りのプロジェクトに関わる機会が増えました。

 例えば、熱海の「atamista(アタミスタ)」というゲストハウスのプロジェクトです。お金を出してくれて、かつファンになってくれるような人を集めたいという理由でプロジェクトを立ち上げました。お金を出した人が実際にゲストハウスにも来てくれたので、単に資金調達だけではなく、人をつなげるところまで貢献できたモデルケースになりました。

井上 お金を集めることにとどまらず、人を動かし、つなげることがクラウドファンディングの大きなメリットなのですね。

米良 沖縄の「おもちゃ美術館」のプロジェクトも、人を動かすことに成功した事例です。お金を出してくれた人に、リターンとして沖縄に生息している鳥のヤンバルクイナをモチーフにしたパズルのピースを送り、そのピースをはめるパズルフレームに支援者の名前を入れて、美術館に掲示しました。「いつかこのピースをはめに来てください」というメッセージと一緒に送ったことで、おもちゃ博物館に来てもらう理由付けができました。

 リターンをうまく設計することによって、支援者とプロジェクト実行者をつなげることができます。

井上 クラウドファンディングが人と人をつなぎ、感動の創出、コミュニティーの創出につながっているのですね。

 最後に、これからの目標を聞かせてください。

米良 私たちは、すべての人たちが自分のやりたいという思いに従ってどんどんチャレンジをする社会を作りたいと考え、このサービスを提供しています。そういった社会の実現のため、何に取り組んでいけばいいのか、どう変わっていけばいいのかを日々考え続けたいと思っています。

 ゴールがなかなか見えませんが、「Readyfor」によって人々の挑戦をサポートすることで、私自身の人生は豊かなものになりました。クラウドファンディングという思想自体を支持する人がもっと増えたら、何かをやりたいと思ったときに誰もが挑戦できる豊かな社会になります。これからも実行者をしっかりサポートし、やりたいことが実現できるよう努めていきます。

対談を終えて

 「誰もがやりたいことを実現できる世の中をつくる」。普通なら、半ば懐疑的に感じられる社是ですが、クラウドファンディングを活用すれば実現可能になります。すごい世の中になったものだと痛感しました。

 しかも、支援者へのリターンはお金以外のものだといいます。これは、利益目的の出資とは違い、純粋に人の思いや夢を応援したい人だけが集まる素晴らしい仕組みです。特に、ボランティアや地方創生、教育支援などのプロジェクトにぴったりの仕組みだと思います。そういったプロジェクトの多くは、真の意味で世の中を変えていく可能性が高いものばかりです。本当に大義のある仕事だと感じました。

 お金がない、人脈がない、情報がないと従来なら諦めなければならなかったことが、思いさえあれば実現できてしまう仕組みが既に完成しています。ぜひ活用し、あなたの夢に挑戦してほしいものです。クラウド(群衆)の力は偉大なり!

プロフィール

井上敬一

ブランディングコミュニケーションデザイナー

株式会社FiBlink代表取締役

兵庫県尼崎市出身。立命館大学中退後、ホスト業界に飛び込み1カ月目から5年間連続ナンバーワンをキープし続ける。当時、関西最高記録となる1日1600万円の売り上げを達成。業界の革命児として、関西最大規模のホストクラブグループの経営業を経て、現在は実業家として企業、個人のブランディングやアパレル、サムライスーツなどのプロデュースを手掛ける他、人に好かれるコミュニケーションを伝える研修・講演を展開している。また、WEBセミナー「プレジデントキャンパス」により、中小企業経営者の学びの場をもっと身近なものにして日本経済をけん引する役割を目指す。

圧倒的な実績に裏付けられたコミュニケーションスキルをわかりやすく説く講演は、多くの企業・団体から支持を受けている。これまで数多くのメディアに取り上げられ、独自の経営哲学で若いスタッフを体当たりで指導する姿はフジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』で8年にわたり密着取材され、シリーズ第6弾まで放映されている。

 主な著書に、「ゴールデンハート」(フジテレビ出版)、「人に好かれる方法」(エイチエス株式会社)などがある。


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