ただし、つきあい方をしくじると、二流のストレスになります。うまくつきあうと、一流のストレスになります。中身ではなく、つきあい方で、一流と二流が分かれます。
人とストレスとの関係に、一流の関係と二流の関係があるのです。ストレスを敵にしないで、味方にしましょう。
長時間「労働」をさせられるのは、二流のストレス。長時間「仕事」をするのは、一流のストレス
社会では長時間労働が問題になっています。これは、国も企業も解決しなければならない問題です。われわれがこれからどう生きていくべきか、仕事と生き方に対して考えるキッカケを与えているのが長時間労働の問題です。
「長時間労働」イコール「いけないこと」という考え方では、上っ面のとらえ方になります。一生懸命に仕事をしても長時間労働なのに、マイナスのストレスを抱えることなく、偉大な業績を残している人もいます。
IT企業の経営者は、みんな長時間労働です。家に帰らず、机の下で寝ています。ビル・ゲイツの時代から、それは変わっていません。それなのに、彼らはストレスを訴えたり、メンタルをやられたり、体に不調を来すことはないのです。
芸術家も、休みに関係なく、ずっと仕事をしています。それをストレスとは感じません。スポーツ選手も、ストレスをハードワークで乗り越えています。日本のラグビーが強くなったのは、日本人が最もハードワークの練習に強かったからです。
そう考えると、長時間労働自体がいけないのではないのです。
しんどいのは、長時間労働をさせられている人です。自らの意思ではなく、断れなくて仕方なく働いているからです。自分のしていることが「長時間労働」か「長時間仕事」か、ということです。
労働は、お金のためにすることです。仕事は、自分の成長のためにすることです。お金のために断れないとか、食べていくためにイヤイヤしているとかのうちは、その仕事はストレスになります。
アスリートや芸術家、経営者は、自分の成長のために、仕事としてストレスを受けています。お金のためではないので、ストレスはマイナスにはなりません。
「労働」と「仕事」は、働き方の意識レベルの差です。「ジョブ」は労働、「キャリア」は仕事です。ジョブよりキャリアの方が、はるかに二流のストレスは少なくなりますストレスの大きさは、どちらも同じです。それがプラスに転ぶかマイナスに転ぶかで分かれるのです。
キャリアのもう一段上に「ミッション」があります。ミッションは、世の中のためにすることです。
マザー・テレサは、それこそ長時間労働をしていました。たとえ長時間労働を禁止したとしても、マザー・テレサの奉仕活動は禁止できません。マザー・テレサが、長時間労働で心を病んだり体を痛めたりしないのは、それがミッションだからです。
ジョブからキャリア、キャリアからミッションに意識が変わることで、ストレスがプラスに転じていくのです。
自分自身の仕事をミッションにし、部下の仕事をミッションに変えていくのが、リーダーの役割なのです。
著者プロフィール:中谷彰宏 作家
1959年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部演劇科卒業。博報堂勤務を経て、独立。91年、株式会社中谷彰宏事務所を設立。
【中谷塾】を主宰。全国で、セミナー、ワークショップ活動を行う。【中谷塾】の講師は、中谷彰宏本人。参加者に直接、語りかけ質問し、気づきを促す、全員参加の体験型講義。
著作は、『一流のストレス』(海竜社)など、1030冊を超す。
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