第3回:「10秒会話」でできる意識改革とは:新人が勝手に育つ「10秒会話と質問」(2/2 ページ)
考える時間が短いと、すぐに回答がでないのでは。もっと深く考えてほしい。そんなときの上司対応は。
新人は、毎回この質問をされることで、進捗報告の準備だけでなく、毎週の営業活動における重要課題とその解決方法を事前に考えるようになります。先ほどの質問に新人が答えます。
新人:「今週の重要課題は、価格交渉の失敗です。今後は、価格面で言いづらいことを恐れず早めにお客さまに伝えていきます」
このように、指導者は、「今週の重要課題と次週に向けたアプローチを説明してもらえるかな?」という10秒で伸ばす時短質問を、毎週繰り返し投げかけます。
毎週繰り返すことで、新人はその場で考えるのでなく、前もって考えることを徐々に覚えていきます。これにより、主体的に考えることが習慣化されるのです。新人が事前にしっかりと考え、簡潔に的を射た説明ができれば、会議の場での10秒で伸ばす育成は機能するようになるでしょう。
10秒会話で会議で自発的に発言するイメージをさせる
会議に参加すると、完全にお客さまのような新人をよく見かけます。
「まだ新人だから意見を求められないはずだ」
「まだ新人だから大したことを言えなくても大丈夫」
「私は議事録を取ることに専念しているから、自分の意見は何も言わなくてもいい」
と考えているような新人です。
こうした新人を、より早く一人前に鍛え上げるためにも、会議に出席させる前には、あらかじめこう伝えておきましょう。
「当日の会議で発言する内容を事前に考えて整理してほしい」
「会議が始まる前に、誰よりも多くのアイデアを出しておいてください」
「会議で『私なりにアイデアを整理してみました』と言えるようにしてください」
こう指導する意味は2つあります。
一つは、当事者意識を持たせることです。積極的に会議の議題について考え、発言させることで、より主体的に考えるようになり、成長の速度を速めることができます。もちろん、「こういうふうに考えたのですが……」と新人が切り出せば、その案が良くても悪くても議論の起爆剤になるので、会議を仕切っている進行役も助かるでしょう。会議という場への立派な貢献です。
もう一つは、同期やライバルたちよりも、一歩先んじることができるからです。会議の多くの参加者は、会議のテーマについて事前になんとなく考えてはいますが、しっかりと考え抜いている人は意外と少ないものです。
そこへ新人一人だけ、企画について考え抜いた状態で参加させるのです。 新人はまわりの会議参加者と比べて数日早く行動を始めただけなのに、まわりから見ると「この新人なかなかやるな」「ちょっと違うな」と評価されるわけです。そんなふうに、まわりの新人より一歩先を行く行動をとれるように指導してください。
他の新人と同じことをさせていたら、周囲と同じようにしか成長できません。一歩抜きん出ることを意識させることが大切です。
匠の時短質問
(会議に何も準備せずに出席しようとする新人に対して )
「今日の会議では、どんな発言をしようと思っているの?」
以上、質問による「10秒会話」における意識改革についてお伝えしました。離れていても育成できるという意識、何気ない会議という場を育成の場に変えるという意識。これらを気に留めて、ぜひ、10秒会話の場面を増やしてください。
著者プロフィール:島村公俊
人事系コンサルティング会社を経験後、2006年ソフトバンク(旧ボーダフォン)入社。
ソフトバンクユニバーシティの立ち上げに参画し、研修の内製化をリードする。
日本HRチャレンジ大賞人材育成部門優秀賞、ソフトバンクアワードの受賞をはじめ、アジア初で米国教育機関よりPike’s Peak Awardを受賞。その他、千人規模の新人研修やエルダー(OJT、メンター)教育にも携わり、新人、若手の早期育成にも貢献する。
2015年に講師ビジョン株式会社創業。社内講師の育成トレーニング、OJTトレーナー研修、新人研修などを提供する。近著に『10秒で新人を伸ばす質問術』(東洋経済新報社)がある。
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