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第7の習慣 会議の生産性をあげるドラッカーが教える成果をあげる人の8つの習慣(2/2 ページ)

今回の主題は「会議の進め方」ではなく「会議の生産性をあげる」、である。ここでいう、生産性をあげるとは、平たんな言葉でいえば、成果をあげるということだ。

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聞け、話すな、である。

ピーター・ドラッカー

 ひとたび結論を誤ってしまえば、会社を思いも寄らない方向へ導いてしまう。「部下はなぜそう考えるのか」ということについて知っておいて損はない。自分に見えていないものを残したまま何かを決定してしまうのと、自分に見えていないものを新たに知ったうえで決定するのとでは、その後の結果は大きく変わる。

 後者の方がより精度の高い決定ができるのは当然だ。上司は、「部下に見えていて自分に見えていないもの」を知ることが必要であり、そのためには自分と違う考えに耳を傾ける姿勢が求められる。だから、「聞け、話すな」なのだ。

部下の声に耳を傾ける

 「聞け、話すな」といっても、ドラッカーは「何も言うな」と言っているわけではない。上司が、「どんな考えで、どんな結果を望んでいるのか」といった大枠は示さなければ周りが困ってしまう。「どういう方法で行うのか」ということについては細かく口出しするより、部下に任せた方がいい。

 ところが、「どんな考えで、どんな結果を望んでいるのか」といったことは言わず、「こうやれ」と命令することが多い。部下の力を抑え込むのはたいてい上司である。上司はどんな結果を望んでいるのかを明示したうえで、「私はこう思うが、君たちはどう思うか」と問いかければ部下は考えてくれるし、意見を言ってくれる。何より部下が力を発揮してくる。

成果をあげる会議

 立場、役職、仕事、責任が違えば見えるものが違う。物事には必ず死角がある。自分の肉眼で自分の背中を見ることができないように、1人の人間が認識できる範囲にはおのずと限界がある。生身の人間である以上、思い込みや間違えもある。

 実際、部下の話をじっくり聞いてみると、「自分はそこを気にしていたのか」ということに気付けたり、自分が見落としていたものを見つけたりすることができる。部下も理に合っていないことを言うはずがない。そこには上司の視界に映らないものが隠れているものだ。「なるほど、そういう背景があるとは知らなかった」と理解が深まり、「分かった、それならこうしよう」と、より適切な考えが生まれ、自分の結論が変わることもある。これが、成果をあげる会議である。

全人格的な献身が必要

 話し合いは、戦闘的な争いは不要でも建設的な対立は必要だ。ゆえに、「考えを否定し合う会議」から「お互いの考えを理解する会議」でなければならない。そして、「上司が自分の考えを分からせる会議」から「出席者全員で考えをつくり出す会議」に変えていかなければならない。それは小手先ではない。会議の生産性をあげるためには、全人格的な献身が必要なのだ。成果をあげる人はそれを習慣にしている。

(参考文献:次の書籍の中から一部引用させていただいた。『経営者の条件』『ドラッカー5つの質問』)

著者プロフィール:山下淳一郎 ドラッカー専門の経営チームコンサルタント

ドラッカー専門の経営チームコンサルティングファーム トップマネジメント

東京都渋谷区出身。ドラッカーコンサルティング歴約33年。外資系コンサルティング会社勤務時、企業向けにドラッカーを実践する支援を行う。中小企業の役員と上場企業の役員を経て、ドラッカーの理論に基づいた経営チームをつくるコンサルティングを行う、トップマネジメントを設立。現在は上場企業に「経営チームの研修」「経営幹部育成の研修」「後継者育成の研修」を行っている。 

著書に『ドラッカーが教える最強の後継者の育て方』(同友館)、『ドラッカー5つの質問』(あさ出版)、『新版 ドラッカーが教える最強の経営チームのつくり方 』(同友館)、『日本に来たドラッカー 初来日編』(同友館)、『ドラッカーが教える最強の経営チームのつくり方 』(総合法令出版)、『ドラッカーのセミナー』(Kindle)、『ドラッカーが教える最強の事業承継の進め方』(Kindle)がある。主な連載に『ドラッカーに学ぶ成功する経営チームの作り方』(ITmedia エグゼクティブ)がある。ほか多数。


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