デジタルで20世紀型の産業構造を変革する――ラクスル 松本恭攝氏:デジタル変革の旗手たち(2/2 ページ)
伝統的な産業にデジタルテクノロジーを持ち込むことで、20世紀型のアナログな産業構造を変革し続けるラクスル。より適切なテクノロジーを導入し、顧客の課題に向き合い解決することで顧客のDXを着実に推進している。ITmedia エグゼクティブ エグゼクティブプロデューサーの浅井英二が話を聞いた。
「なぜ自動化が進まなかったかといえば、IT業界のビジネスモデルが人月単位になっているためです。自動化できるのに、○○×人数、○○×シート数になっているので、インセンティブが働かない構造になっています。自動化という発想に基づいたサービス設定がなされていません。仕事が増えたので人を増やすという考えは、生産性を無視した人による問題解決です」(松本氏)。
現在、ジョーシスでは、ハードウェア、およびソフトウェアの調達と管理をサービスとして提供している。ハードウェアに関しては、PCやデスクトップ、モニター、マウスなどの購買とキッティング作業をBPOとして提供し、ポータルで従業員ごとの資産管理を提供。ソフトウェアに関しても、SaaSの付与からアカウントの削除までを統合的に管理できる。今後は、資産の棚卸やヘルプデスク、社員と情報システム部をつなぐ窓口など、従業員のコミュニケーションをサービスとして提供する計画だという。
顧客の課題をソフトウェアで解決し続ける
DXを推進するうえでの課題について松本氏は、「ラクスルにおいては、DXという取り組みに関して特別に意識はしていません。なぜなら、ラクスルはデジタルネイティブにスタートした会社だからです。より新しいテクノロジースタックを導入していく意味でのDXはありますが、歴史のある既存企業が抱えるDXの課題には直面していません」と話す。
ただ、既存の企業がDXを推進するにあたって、どこまでを自分たちの領域として取り組むかを明確にすることが重要だと指摘する。どれだけのコストをかけて、どのようなアウトプットを出していくか、目標設定とテクノロジーの選定、さらに人材育成が重要になるという。「テクノロジーを活用する本来の目的は、働く人の生産性を高め、現場をより良いものに変えていくことです。システムを導入するときには、現場を巻き込んで、進めることが必要になります」と松本氏。
DXの意義は現場を楽にすることなので、システムを導入した結果、摩擦やハレーションが発生しては成功はおぼつかない。テスト導入をして、現場の声を生かし、生産性が改善されることを確認しながら進めることが重要になる。
「ラクスルは、今後もデジタルを通じて、あらゆる業界の課題解決を続けていく会社であることに変わりはありません。顧客と向き合い、その課題を解決することがビジネスに直結すると思っています。なにが課題かを明確にし、課題を解決するためのサービスに落とし込んでいくことを愚直にやり続けることが、ビジネス領域の拡大につながります。向き合うべきは顧客が直面している課題であり、ソフトウェアによる解決策を提供し続けていくことが、ラクスルの目指す未来の姿です」(松本氏)
聞き手プロフィール:浅井英二(あさいえいじ)
Windows 3.0が米国で発表された1990年、大手書店系出版社を経てソフトバンクに入社、「PCWEEK日本版」の創刊に携わり、1996年に同誌編集長に就任する。2000年からはグループのオンラインメディア企業であるソフトバンク・ジーディネット(現在のアイティメディア)に移り、エンタープライズ分野の編集長を務める。2007年には経営層向けの情報共有コミュニティーとして「ITmedia エグゼクティブ」を立ち上げ、編集長に就く。現在は企業向けIT分野のエグゼクティブプロデューサーを務める。
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