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第1回 なぜ今「学び」が求められているのか人生100年時代を切り拓く! ミドルのための「学び」戦略(2/2 ページ)

キャリアのオーナーシップを会社から自分に取り戻し、本当にやりたい仕事に取り組もう。

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 本人にしてみれば「定時に帰ることの何が悪い」という思いでしょうが、毎日会社への面(つら)当てのようにきっちり定時に帰ることを繰り返していれば、職場内では「やる気のないおじさん」「働かないおじさん」というイメージが定着します。大ベテランだけに年下上司はもちろん周囲のメンバーも注意することはできず、扱いづらいシニアとしてますます自分の立場を悪くしていくことになる。居心地がいいわけがありません。不平不満は、自分をいっそう不幸にしていくのです。

 そのように自分の置かれた状況をネガティブにとらえ始めると、前述のような負のループが起きてしまいます。さすがに、こうしたシニアのモチベーション停滞を問題視し、60歳などの定年年齢で一律に待遇を下げることは健康寿命が伸びる現代にそぐわない、と考える企業も増えつつあります。

 そのため、能力のあるシニアであれば、管理職を継続して任せたり、重要な役割に登用したりするなど、人事制度を改善する動きも出てきました。年功序列ではない、いわゆるジョブ型の人事制度ですね。しかし、こうした変化により、今度は「果たして自分は“能力のある”シニアと評価してもらえるのだろうか」「同期で定年となった親友が登用されたのに、自分はされなかったらどうしよう」といった新たな不安も生まれてきています。

ミドルは「本物の学び」で充実したキャリアを切り拓こう!

 今ミドルが置かれている状況を全て個人の責任としてしまうのは、あまりに酷です。しかし、会社への不平不満や被害者意識からは何も始まりません。時代のせい、会社のせいにしたところで、誰かが責任を取ってくれるわけではないのです。であれば、この状況を認め、受け入れ、自分の意志で新たな一歩を踏み出すことこそが大切です。

 2020年に一世を風靡(ふうび)したアニメ『鬼滅(きめつ)の刃(やいば)』の劇中、物語の序盤で、鬼となった妹・禰豆子(ねずこ)を斬ろうとする柱(鬼退治のエリート剣士)・富岡(とみおか)義勇(ぎゆう)に、泣きながら妹を助けてほしいと嘆願する竈門(かまど)炭治郎(たんじろう)を、義勇はこう叱責します。

 「生殺与奪(せいさつよだつ)の権を他人に握らせるな!」

 大ヒットした作品ですから見た人も多いと思いますが、なかでもこのせりふは会社で居場所を失いつつあるミドルの心に突き刺さったのではないでしょうか。思えば、日本のサラリーマンは生殺与奪の権を会社に握られていました。今こそ、それを自分の手に取り戻すべきときです。

 では、何をしたらいいのか。「やりたいこと」を見つけるのです。「天職」に出会うのです。それこそが自分のキャリアのオーナーシップを握り、幸せな第二の職業人生を送るために最も大事なものなのですから。

 しかし、自分でキャリアビジョンを描いた経験のないミドルが、ゼロからやりたいことを見つけるのは簡単なことではありません。あまり深く考えずに、「取りあえず」で決めてしまうと、あとで方向転換することになるリスクが高すぎます。かといって、じっくり時間をかけて考えれば、正しい答えが見つかるというものでもありません。そもそも頭の中だけで考えても、答えの出にくい問題です。

 そこで、私が提案するアクションが「学び」です。まずは興味が引かれる分野に関して学んでみるのです。学ぶという行為、学びに付随する体験は、「やりたいこと」について実感をもって知るためには非常に効果的だからです。

 組織や他人から押し付けられた、苦痛でしかない「リスキリング」(DXなどに適応するためのスキルの学び直し)ではなく、自ら選び、充実したキャリアへとつなげる「本物の学び」こそが、大切なのです。

 次回以降では、ミドルのための人生を変える「学び」戦略について、説明していきましょう。

※本稿は前川孝雄著『50歳からの人生が変わる 痛快!「学び」戦略』(PHP研究所、2021年11月)より一部抜粋・編集したものです。いかにして一生もののワクワクする本当の学びに出会うか。――そのヒントを得たい方は、ぜひ同書をご参照ください。


著者プロフィール:前川孝雄(FeelWorks代表取締役/青山学院大学兼任講師)


(撮影:安岡嘉)

人材育成の専門家集団FeelWorksグループ創業者であり、人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。兵庫県明石市生まれ。大阪府立大学、早稲田大学ビジネススクール卒業。リクルートで「リクナビ」「ケイコとマナブ」「就職ジャーナル」などの編集長を経て2008年に「人を大切に育て活かす社会づくりへの貢献」を志に起業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、400社以上を支援している。独自開発した「上司力研修」「50代からの働き方研修」、eラーニング「パワハラ予防講座」「新入社員のはたらく心得」などを提供。多様な働く人たちの本音に通じ、四半世紀にわたる現場研究に基づいた研修プログラムで、現場を預かるリーダー達から圧倒的支持を集めている。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年に働きがい創造研究所設立。情報経営イノベーション専門職大学客員教授、一般社団法人企業研究会 研究協力委員サポーター、一般社団法人ウーマンエンパワー協会理事なども兼職。連載やコメンテーター、講演活動も多数。著書は『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)、『上司の9割は部下の成長に無関心』(PHP研究所)、『年上の部下とうまくつきあう9つのルール』(ダイヤモンド社)、『もう、転職はさせない!一生働きたい職場のつくり方』(実業之日本社)、『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所)、『本物の「上司力」』(大和出版)、『50歳からの幸せな独立戦略』(PHP研究所)、『人を活かす経営の新常識』(FeelWorks)など多数。最新刊は『50歳からの人生が変わる 痛快!「学び」戦略』(PHP研究所、2021年11月


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